2016年01月07日

要がお酒を飲むとどうなる? 2

「会長はんって、酒に弱いんか?」
 泉介が、結人にポッキーを食べさせてあげながら、誠志に聞いてみた。
 誠志は何か、警戒をしているようだった。
 泉介が手に持つポッキーを、小動物がエサをもらうように、ぽりぽりぽりと食べている結人も、不思議そうに誠志を見た。
 要は、いつも通り、机に座っている。
 いつも通り、楽しそうに、ニコニコしながら、みんなを見ている。
 にこにこにこにこ・・・。
 誠志は、そんなニコニコ要を見てから、メガネの中心を長い指で押さえて、重く深いため息をついた。
「・・・今回は、そっちからか・・・」
「そっち?」
 結人が、なんのことだろうと思って聞いたけど、誠志は答えてくれなかった。
 代わりに、最初に泉介が聞いた疑問の答えを、誠志は口にした。
「要は、弱くはないな。むしろ、酒に強い。ただ、ある一定量を飲むと、急に酔う。そして」
「ゆーいとぉ!」
「わっ!」
 誠志の言葉をさえぎって、いつの間にか結人の背後にまわっていた要が、結人をぎゅうっと、抱きしめてきた。
 そして、結人のほおや頭に、チュッチュッチュと、何度も何度も、キスをしだした。
「ゆいーと。ゆーいと。ゆいと、ゆいと」
「は、はい、かなめさん?」
「ゆーいと。ゆーいと。オレのかわいいゆいゆい、オレのお話きーいて」
「えっと、は、はい」
「結人、オレね、結人に、言いたいことがあるんだ」
「あ、はい、えっと」
 グイグイ迫ってくる要の勢いに押されて、結人は、「はい」しか言えない。
 でも、結人がお返事してくれた。
 だから、要は、さらににこにこ、上機嫌になった。
 だから、さらにもっともーっと、甘ーい声を出してきた。
「オレね、結人が、ものすごーく、好きなんだ。大好き。超すき。世界一すき。かわいい、かわいい。結人がかわいい」
 なんか、いきなり、要が、デレていた。
 デレデレしていた。
 デレ全開の要だった。
 要のデレは、いつものことだけど、なんか、いつもと違うような。
 いつも以上に、デレているような。
「かなめさん?」
「だからね・・・」
「はい」
「オレと、いいことしようぜ」
 結人はいつの間にか、机に押し倒されていた。
「え?え?え?」
 結人を押し倒した張本人の要は、雰囲気が、ガラリと一変していた。
 長めに伸ばした前髪の隙間から見えるきれいな瞳は、いつもの優しい色ではなく、どこか怪しく光っていた。
 ぺろっと、自分自身の唇を舌で舐める要は、どこか、肉食獣を思わせた。
 さっきまで、デレデレモードだったはずの要に、攻めスイッチが、過剰に入っていた。
 結人に見せない、裏の顔をして、ニヤァと笑って、結人を見下ろしていた。
「え?ええ?要さん、どうしたんですか?」
「オレは、どうもしないぜ。どうしちゃたのかな、結人?怯えてる?びっくりしてるのかな?ふーん、それも、かわいいな」
 要が、指先で遊ぶように、結人の顔をなぞった。
 そして、その指で、クイッと、結人の顎をあげた。
 そうして、無防備になった結人の細い首筋に、指をはわせ始めた。
 なんか、要が変だった。
 なんか、攻めな感じで、色気を出している。
 しかも、要が人前で、結人に手を出すなんて、ないことだったのに。
「か、香守先輩!要さん、ど、どうしたんですか?」
「だから、要は、酔っているんだ」
 誠志がまた、重いため息をついた。
「要は、酔うと、無性にヤりたくなる」
「ええ?!」
「しかも、普段、優しい自分でいようとして、抑え込んでいるものが多すぎるからな。酒に酔うと、リミッターが外れて、感情が爆発する。しかも、いきなりデレたり、攻めになったり、属性がコロコロと変わる。その切り替えのタイミングは、オレにも分からない」
「ええ?!」
 驚いていたら、結人は要に、ぎゅうっと抱き寄せられた。
「結人。誠志と話さないで、オレと話そう?オレ、結人にほっておかれたら、さみしいよ。オレ、さみしいのヤダ。さみしいとウサギは、死ぬんだぜ・・・」
 要が攻めモードなのかと、結人がかまえたら、瞳をうるうるさせた、デレだった。
 しかも、
「要さん、うさぎさんなんですか?って、あれ・・・?ええ?!お、おれ、いつの間にか、ぬ、ぬがされてる!」
 テクニシャン要も、解放されていた。
 要は、自然な動きで、なのに一瞬で、結人の服を乱していた。
 そして、やさしく、にこっと笑った。
 かと思ったら、また、表情が変わった。
「まっ、うさぎは、寂しくたって、本当は死なないけどな。寂しいって言えば、結人がかまってくれそうだからさ、言ってみた」
 策略家要の時の顔をしていた。

要がお酒を飲むとどうなる? 3

 スイッチの切り替えが異常に速い要に、どう接していいか分からず、結人は手を伸ばして、ヘルプを求めた。
「か、香守先輩、密、泉介。たすけて。おれ、どうしたらいいか」
「ん?誠志ちゃんが、いるじゃんか」
 結人の視線をおった要が、誠志の姿を見つけ、獲物を狩るハンターの目をした。
 その瞳の異様な輝きに、過去のいやーな経験を思い出し、誠志はきびすを返して、部屋を出ようとした。
 が、
「誠志。オレから逃げられるとでも、思ってんのかよ!!」
 ツンツンしだした要が、ガッと誠志の首に腕を回して、誠志を拘束した。
 要は普段は、傷つけるのが怖くて、本気を出さないが、逆に遠慮を失ったら、破壊系最強男に、誰も敵わない。
 誠志でも、勝てない。
 要が首にかけたホールドは、簡単にはとけない。
 首の骨がギリギリ鳴って、苦しい。
「要、離せ・・・」
「やーら。オレ、誠志も好きだもん。結人と違う、好き。誠志はオレの、相棒だ。オレのだ」
 デレた。
 王様モードプラスで、デレた。
 けど、すぐ、攻めモードに入った。
「誠志ちゃーん、お前って、首、太いよな」
 攻めスイッチが入っている要が、変な笑いをしながら、誠志の首筋に、舌先をつけた。
「か、要さん?」
 要が誠志を、ヤる気なのか?!
 要×誠志が起きるのか?!
 そんな驚きで混乱するみんなをよそに、要は暴走を続けた。
「誠志ってさ、いい体してるよな。オレより、体格いいんだよな。背もオレより高いし、声もオレより低いし、なんかオレより、男ポイントに恵まれてて・・・・・・ムカツク!!ガブ!!」
 要が誠志の首に、噛み付いた。
 それはも、ガブリと、遠慮なく。
「要、噛むな!」
「やら!!ガブガブガブ!」
 要は、甘えた子供のような、ツンツンモードだった。
 容赦なく噛み付く要の頭に手を押し当てて、誠志は無理やり引きはがそうとするが、要は、カメかスッポンにでもなったかのように、噛み付いて離れない。
 そのまま、今度は、ツン全開になった。
「テメェには、たまには、お仕置きが必要なんだよ!ガブ!」
「要、いい加減にしろ」
 要&誠志の、いつものじゃれあいが始まったのか、それとも、攻め×攻めな状態なのか、理解が追いつかない結人たちをよそに、二人のとっくみあいが開始された。

 けれど、これは、要の酔っ払いモードの中盤戦・・・。

要がお酒を飲むとどうなる? 4

「ガブガブガブ!モグモグモグ!」
「要、食べる気か?・・・いい加減にしろ」
 誠志の首を腕で拘束したまま、いつまでたっても誠志の首を噛み続ける要に、誠志が眉をひそめながら、低く声を出した。
 そして、力づくで引きはがすことにした。
 要に体重をかけて押し、要の脚が浮いたところに、足払いをかけようとしたが、
「甘いぜ、誠志!よいっしょっとー!」
 要が、倒れそうになった両足を床につけて、踏ん張ったかと思うと、その勢いのまま、誠志を床に押し倒した。
 うつぶせに倒して、その上に乗って、また、誠志の首に腕を回して、捕獲した。
 がっちり、しっかり、逃げられないように、拘束した。
「捕まえたぜ、誠志ちゃん」
 攻めモードの要は、無敵。
 そして、攻めだから、服を脱がすのが、好き。
 脱ぎ上戸じゃなくて、脱がせ上戸。
 酔ってしまうと、ヤりたくなるし。
「うーん、服が、ジャマだな」
 結人の服は、さっき脱がしたので、次は誠志を、脱がせることにした。
 誠志の前に手を伸ばして、ブレザーの制服のネクタイをシュルっとほどいて、シャツのボタンを、プチプチと手際よく外した。
 で、誠志の肩をあらわにしてみたが、誠志の肩は、普段は服で隠れているが、やっぱり、いい感じに隆起した、男らしいもので。
「ムカツク!ガブ!」
「要、やめろ」
「いーやーだ!その男らしい体、オレによこせ!ガブガブ!」
 また、噛んだ。
 要も、誠志みたいな筋肉をつけてもいいが、スピード性の高い技を重視しているので、重い筋肉をつけすぎないようにしている。
 それに、自分の容姿に似合わない。
 この、誠志みたいな、がっしりとした肩が自慢の、逆三角形体系は。
 顔が、うくのだ。
「クソー!噛みまくってやる!」
「・・・お前は、いつまで、攻め状態でいるつもりだ」
 なんだか、要の攻めモードが長い。
 ツンツンしながら、攻めてくる。
 このまま、デレに切り替わるのを大人しく待っていたら、何をされるか分からない。
 結人たちの前で、その醜態をさらすのは、鬼畜攻めの権威にかかわる、重要な問題だ。
 なので、誠志は、腕を伸ばした。
 自分たちを、驚きながら、なのに、のんきにお菓子を食べながら見ている、1年トリオに。
「会長はんが、副会長はんを、襲ってるで。密、お二人は、そういう関係なんか?」
「違う。要は、結人が好きだ。二人は仲がいいだけだ。誠志に、要をいつもとられる。ムカツク」
「密は、要さんが、大好きだもんね。でも、要さんと香守先輩って、ほんとに仲がいいよね」
 そんなほのぼの観察をしている、1年トリオ、泉介、密、結人の中から、一番近くにいた密の足首を、誠志はつかんだ。
「要、俺で遊んでないで、弟で遊べ」
 密を引きづり倒すように、誠志は要に、密を放り投げた。
 身代わりだ。
「密!」
 新たな要の獲物・・・要の大好きな人物の登場に、要の目が、獣を狩るハンターの輝きをきらめかせた。
 そして、飛びかかった。
 誠志を、ぽいっと放り投げて。
「密、きたー!」
「・・・!!」
 無言で、無表情に驚く密を、要はがしっと、抱きしめた。