2016年01月07日

要がお酒を飲むとどうなる? 5

「ひそっか!」
 密に飛びかかった要が、密を捕獲したかと思うと、密の頭を撫でだした。
 密の硬くてまっすぐな髪が、わしゃわしゃなるほど、思いっきり。
 誠志に対しての、長いツンツンモードの後には、デレデレがきたようだ。
「ひっそかの、黒髪キューティクル!オレの弟キューティクル!」
「要・・・」
「密、どうしたんだ?お兄ちゃんだぜ?もう、兄(にぃ)呼びはしてくれないのか・・・?」
 密が小さいころは、要にぃ、要にぃと呼んで、要の後をついて回っていた。
 にぃにぃ言う密・・・かわいかった。
 その密が、要と呼び出したのは、密なりの自立を目指しだしたということだから、要もそのままにしていたが。
「けどな、お兄ちゃんは、やっぱり、さみしいんだ!」
「・・・・・・・要?」
「密に、にぃ呼びされたら、お兄ちゃん、めっちゃ、がんばれるんだぜ!お兄ちゃん、がんばっちゃうぜなんだぜ!」
「要」
「呼んでくれないんだな。・・・・・・・さみし・・・」
 要が、しょぼんとしたかと思うと、さみしいさみしいと、ブツブツ呟きだした。
かと思うと、密の両肩をガシッとつかんで、密を振り回し始めた。
「呼びやがれ!オレは、オレだけが、密のお兄ちゃんだ!背を抜かれても、お兄ちゃんなんだ!お兄ちゃんなんだ!お兄さんなんだ!兄貴なんだ!だから、だから、だーかーらー」
「?」
「縮め!!」
 要が、無理難題な命令をしてきた。
 伸びた身長が、意志の力で、縮むわけがない。
 そんなこと、分かっている。
 でも、弟の密に、身長を抜かれたのは、要のかなりのコンプレックスだ。
 密は、無表情のまま、どうしようか考え込んだ。
 考えて、考えて、考えて。
 急に、大きな体をコンパクトに丸めて、体育座りをした。
「・・・縮んだ」
 密的解釈と発想で、縮んでみたらしい。
 密なりの、兄の期待に応えようとする、精一杯の努力。
 その結果が、でっかい高校生男子の体育座り。
 その姿に、要がなぜか、感動して、瞳をうるうるさせだした。
「密、お前のその発想力・・・。いつも、かわいいなぁ」
 要が、丸まっている密を、めいいっぱい抱きしめた。
 頭、わしゃわしゃもした。
 そして、
「かわいいから、脱げ!」
 どーんと、密を突き飛ばすと、床に押し倒して、密も脱がしにかかった。
 やっぱり、酔った要は、脱がすのが、大好き。
 いつの間にか、デレから攻めに、切り替わったようだ。
 でも、脱がすだけでは、攻め攻め要は、満足しなかった。
「お兄ちゃんはな、お兄ちゃんなんだ!だーかーらー☆」
 ムフッと要が笑ったかと思うと、密のわきに手を差し込み、
「お兄ちゃんは、弟の弱点を、知り尽くしてるぜ!兄ってのは、そういう生き物だ!兄弟に下克上はないのさ!」
 密のわきを、くすぐりだした。
 意味不明な、兄弟理論とともに。
 更に、全身のあらゆる、密がくすぐったがるポイントを、こしょこしょしだした。
 密が、あまりに的確なくすぐり攻めに、驚愕しながら、無表情にこらえだした。
「・・・・・・・!!」
「ほらほら、そんな無表情でいないで、笑え。笑え!わーらーえー」
「!!」
「笑ったら、きっと、密、かわいいぞぉ」
「・・・・っ!!」
「密、震えるぐらい、こらえちゃって。かわいいなぁ」
 密の弱点を、更にあちこち攻めだした要は、密に馬乗りになったまま、超ご機嫌。

要がお酒を飲むとどうなる? 6

「会長はん、なんや、すごいことになってんで」
 密に馬乗りになって、楽しそうに攻めている要を見ながら、泉介が言わなければいいのに、そんなことを口にした。
 今は、存在感を消し去ることが、重要な状況なのに。
 なので、当然、ハンターモードの要に、目をつけられた。
「せーんすけぇ」
「な、なんや、会長はん?オ、オレは脱がへんで!」
「安心しろ。もう脱がせたぜ!」
「なっ!い、いつの間にや?!」
「オレ、すごいだろ?」
「すごいんやけど、なんでやー?!」
「泉介、すっぽんぽんだな」
 それは、一瞬の出来事。
 閃光のごとき、匠の技。
 って、どんな神技が行われたのか、テクニシャン要が、泉介が驚く間もなく、泉介の衣服を全て脱がせていた。
 酔っ払い要は、当然、泉介のことも、残さず脱がせたい。
 大好きな子たちは、みんな、脱がせたい。
 で、その想いが叶って、脱がせられたから、楽しくって楽しくって、要は上機嫌。
「泉介、かわいいおちんちんしやがって。うりうり」
「会長はん!攻める相手を、まちがえてはるで!!うぎゃー」
 ニコニコしながら、要がおかしなことを始めた。
 泉介の悲鳴が響く。
 要は、ニコニコ、ニコニコ。
 が、
 突然、要の前髪で隠れた瞳が、鋭くなった。
「ウラァ!!」
「?!!」
 驚く泉介の顔の真横をすり抜け、要が、泉介の背後の壁をこぶしで・・・ぶち抜いた。
「危なかったな、泉介。虫がいたぜ」
「む、ムシって・・・!か、壁が・・・!会長はんのほうが、危ないで!!」
「へ?なんでだよ?」
「なんでって、こっちがなんで?や!」
「だって、虫だぜ。怖いだろ?刺されたら痛いぞ。かゆいしな」
「会長はんの、そのパンチが当たったほうが、痛いで!死ぬ!」
「だって・・・虫・・・」
「かわいい顔しても、あかんで!」
「だって・・・オレ・・・泉介が刺されたら、悲しい」
 男前なはずの要が、なんだか、かわいくなった。
 両目をウルウルさせて、しなってなって、しょぼんとなった。
 なんのモードなんだ?と、周りに疑問を抱かせた要は、ぷいっと横を向いた。
 その瞬間、要の視線の先の窓ガラスが、突然、けたたましい音を立てて、割れた。
 誰も、一切触れていないのに、粉々に。
「な、なんや?!」
「ありゃ。誠志、せーいーしー。ヘルプヘルプ」
 要は困った時は、とりあえず、誠志を呼ぶ。
 呼んだら、いつも、なんとかしてくれる。
 なので、なぁなぁと呼び続けたのに、誠志が嫌々そうに、要にほどかれた制服のネクタイを締めながら、無視を決め込んでいる。
「誠志!誠志!誠志!誠志!クソ誠志!オカン誠志!ムシすんな!こっち向けや、オラ!」
 要のガラが、悪くなってきた。
 誠志は知っている、結人たちに見せない要の属性の一つだ。
 誠志は、重い重いため息をつきながら、仕方なく、しぶしぶと返事をかえした。
 酔っ払い要には、なるだけというか、できることならというか、絶対に関わりたくないのに。
「なんだ?」
「あのな、オレね」
「だから、なんだ」
「力の制御、できなくなっちゃった☆」
 要が舌をぺろっとだして、そう、不吉なことを言った瞬間、

 ドカーン!!

 生徒会室が、爆発した。
 性格・属性だけじゃなく、要の破壊系能力まで、開放された。
 なのに、破壊している張本人は、嵐の中心で、
「なぁ、誠志、せーいーし」
「もう、呼ぶな」
「やら!聞いて、聞いて。ってか、聞けや、オラ!」
「なんだ・・・?」
「オレな」
「・・・・・・・・・」
「インスタントラーメン食べたい。もちろん、ミソ味だぜ☆」
 笑いながら、好物を要求しだした。
 誠志の血管が、音を立てて、切れた・・・。

要がお酒を飲むとどうなる? 7

 誠志が、要を鋭い目で、睨み付けていた。
 生徒会副会長・・・別名、鬼畜メガネ男が。
 破壊系能力を、制御できなくなって、生徒会室を破壊している要を、視線で殺すかのように。
「ハッ!!」
 酔っ払い要が、何かの殺気を、強烈に感じた。
 そして、その方向に、こぶしを振り上げた。
「オラァ!!さっきのムシ、見つけたぜ!!」
 要は、虫と戦っていた。
 誠志のお怒りなど、いつものことなので、要は気にもしない。
 人を凍りつかせる、誠志の殺気のこもった瞳も、かわいく思える。
 それより、今は、目の前の虫。
 でも、虫は、この場の誰よりも野生のカンを持っていたのか、瞬時に要から逃げていた。
「チッ!逃がしたか・・・。ん?」
 要は、自分のこぶしをぶつけた場所を見直して、絶叫した。
「ああああああ!!オレの、ミソが!!」
 生徒会室に要が勝手に置いた、インスタントラーメンが大量に保管されたロッカーが、木っ端みじんに砕けていた。
 もちろん、中の、要のみそ味も・・・。
 にんにくしょうゆ派の結人と、いっしょに食べようと思っていたのに。
 結人なら、キスの時、そのかわいいお口から、にんにくの臭いがしても、それすらかわいく思えるのに。
 ミソとにんにくを、口の中で、絡めあうのに。
 その夢が、木っ端みじん・・・。
「ひどい・・・、誰がこんなことを・・・」
 要の瞳が、ウルウルしだした。
 かと思ったら、泣かない男のはずの要が、目から滝のように、涙を流しだした。
「ひどいぜ!誠志!オレのミソ達を、こんな目にあわせるなんて!!」
 要の中で、なぜか犯人は、誠志になっていた。
「・・・いい加減にしろよ・・・」
 誠志が青筋を立てて、低く声を出した。
 いまだ、要の暴走した力で破壊される生徒会室の中、結人にがれきがぶつからないように、結人におおいかぶさっていた密の下から、誠志は結人を、引きづり出した。
「へ?」
 びっくりしている結人の首根っこを、猫つかみすると、誰もいない隅っこに、放り投げた。
「わあ!」
「結人!」
 結人が床に尻もちつく前に、要が結人を、スライディングキャッチした。
「こーらー、誠志!結人、投げんな!!」
「力の暴走は、収まった様だな」
「んん?」
 イライラしている誠志がいうように、変な声をだす要から、破壊系能力の暴走噴出は止まっていた。
 結人を傷つけたくない想いが、力の制御を、取り戻させたようだ。
「ゆーいと。オレ、力を鎮められたぜ。ほめてほめて」
 なぜか、誠志の手柄じゃなくて、結人を抱っこしている要がやったことになっていた。
 しかも、犬っころのように、結人にすり寄っていた。
「要さんが、犬さんみたいだ」
「ワンワン!」
 飼い主に、シッポをふりふりして、ほめてもらいたがっている犬のような感じだった。
 要は、結人の顔を、ペロペロ舐めている。
 他のみんなに、実は精神的には、要が犬で、結人がまさかの飼い主なのか?と、疑問を抱かせる張本人は、さらに、きょとん顔の結人に、要求を出し始めた。