2015年12月20日

ほのぼの夏の旅行 2

 数分後、更衣室から出てきたのは、密だけだった。
「結人はどうしたんだ?」
 不審に思った要がたずねると、密が無言で、更衣室のドアに隠れている結人を指さした。
「結人?」
「要さん・・・あのね・・・その・・・。おれね・・・わすれてて・・・」
 何をだろうと要が結人に近づくと、結人が恥ずかしそうに、水着姿の自分の体を手で隠していた。
 けれど、隠しきれていない結人のきれいな肌についている、いくつものうっ血した痕が、要の目に飛び込んできた。
 誰かが、あの行為の最中につけたであろう痕が・・・。
 要は自分が着ていたパーカーを結人に着せると、結人の首元までチャックをしめた。
「いいんだよ。結人のせいじゃないからね」
「要さん・・・」
 要は、結人を安心させるように、結人の頭をなでなでしてあげると、くるりと反転した。
 そして・・・キレた。
「・・・誰だ?結人に痕つけんなっていっただろうがぁ!!」



 そんな光景を、遠くから見つめる女性たちがいた。
 プライベートビーチに無断で入り込んだ彼女たちは、大騒ぎをする結人たちを見て、つぶやいていた。
「お金持ちがいるかもと思ったけど・・・」
「あの子たち・・・レベル高すぎない?」
「ちょーかわいい!ちょーイケメンだらけ!」
「きゃー!」
と。
 プライベートビーチという、玉の輿にのれるかもしれない素敵な夢の場所にいた男子たちの容姿の良さに、彼女たちは見とれていた。
 将来のお姫様生活をうっとりと思い描きながら、女性たちは近づこうとしたが、突然目の前に現れ、立ちふさがった男によって、阻まれた。
 男は、この炎天下だというのに、きっちりと乱れなくスーツを着込んだ、要の第一秘書である片桐だった。
「申し訳ございません、お嬢様方。ご多忙な要様の貴重な貴重な、あまりにも貴重なプライベートな時間を壊さないでいただけますか?」
「え、えっとぉ、私たちはただ、お友達になりたいなぁって思ってぇ」
「そうそう。じゃまなんてしないんだからぁ」
 わざとしなを作って、甘えたようにしたったらずに話す女性たちの態度を見て、片桐は絶対に会わせるわけにはいかないと心に決め、熱く語りだした。
「要様はお可哀想な方なのです!結人さんに自分の欲望で触れないと誓ったばかりに、読者投票で要様×結人さんを見たいと最も票を獲得しているというのに、話が進むにつれ、結人さんとのそういったシーンが削られるという、辛い立場にいらっしゃるのです!そんな理性と戦う要様の、せめて、結人さんの水着姿が見たいという望みだけでも叶えて差し上げたいのです!」
 要の幸せの為に生きる男、片桐。
 その堅物な中には、熱いものがあるのだ。
 だが、
「片桐ー!なにを力説してんだぁー!」
 力を込めて話す片桐の頭に、要が投げ飛ばした靴が直撃した。

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