2015年12月20日

ほのぼの夏の旅行 3

「まったく・・・。どうせオレは、欲望と理性と欲望と欲望と欲望の間で、戦ってますよーだ・・・」
 要が片桐の過保護っぷりに頭を抱えていたら、結人が眉尻を下げて、要の服をつかんできた。
「・・・要さん、おれ、きづかなくて、ごめんなさい・・・」
「大丈夫だよ、結人。気にしなくていいから」
 しょぼんとする結人の頬を、むにむにしてやると、結人は何を思ったのか、両手にこぶしを作って、要を真剣に見つめてきた。
「おれ、要さんなら、いいです。要さん、やさしいし、いつも助けてくれるし、ごはん作ってくれるし。それに、おれ、読者さまの期待にこたえます!」
「い、いや、結人、そこはがんばらなくても」
「がんばるです!」
 かわいい顔して、どこかずれたところで男らしさを時々発する結人は、こんな感じになったらなかなか意見を変えない。
 さて、どうしようかなと、要はしばし考えたが、結人の瞳が決意に燃えているので、じゃあと試すように結人に顔を近づけた。
「じゃあ、キスだけ本気だしてみてもいい?」
 結人は、どこかで聞いたことあるようなセリフのような気がしたが、思い出せなかったので、元気よく「はい!」と答えた。
「ありがと」
 要はくすっと笑ってから、結人の顔を両手で包んで引き寄せた。
 ちゅー。
「要、結人に何してるんだ・・・」
「会長はん!ずるいで!」
「まぁ、たまには、要にもいい目をみせてやれ」
 愛しの結人にキスする要を止めようとした密と泉介は、誠志に首根っこをつかまれ、引き留められた。
 そのため、要の結人へのキスは、まだまーだ、続いていた。
 とっても、とっても、とぉーっても、濃厚なのが・・・。
 要が本気を出すと、すごいことを、結人は忘れていた。
「・・・んん・・・」
「結人、ありがとうね」
 結人が苦しそうに声をあげたので、要は名残惜しかったが、結人の唇を離してあげた。
 途端、結人がへにゃあとなった。
「・・・かなめさぁん・・・」
 結人の顔が、真っ赤な顔で、トロンととろけていた。
「・・・おれ、へん・・・。からだ・・・あつい・・・」
 実は本気を出すとテクニシャンな要に、結人は腰を砕かれていた。
 崩れそうになる体を、要が支えてあげた。
 要は心の中でこっそり、ごめんねと呟くと、結人を抱え上げた。
「暑さにやられたかな?じゃあ、海入って、冷まそうか?」
「・・・おれ・・・およげない・・・です・・・」
「抱っこしててあげるから、大丈夫だよ」
「・・・うん」
 いまだ、体のほてりから抜け出せない結人を、要は抱えて歩いてあげた。
 その背を追いかけるように、密と泉介が抗議してきた。
「・・・要、ずるい・・・」
「会長はん、なに、二人だけの世界、作っとんのや!」
 その声の隙間に、誠志がボソッとつぶやいた。
「まぁ、たまには海でヤるのも、悪くないか」
「ええ!海でされるの?」
 結人が、驚きの声を上げた。
「しない、しない。オレが守るから、大丈夫だよ」
 要が安心させるように結人のおでこに、ちゅっとキスをしたのを合図にしてか、その後、結人の争奪戦が起きた。



 それは、夏の日のこと。

 シリアスな本編から削除された、起こらなかった、夏の出来事。


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