2015年12月24日

第18話時点、人気投票1位ご褒美(要) 3

「やーっぱ、1枚じゃ叶わなかったんだな」
 結人たち仲良し家族のジャマをしないように、要は生徒会室に戻ってきていた。
 あの結人たちの幸せな空間に、入り込める隙もなかったし、壊したくもなかった。
 結人が幸せなら、それでいい。
 だから、いつもの要の居場所に戻ってきた。
 そこには、いつも通り誠志がいたので、要は独り言のように話し出した。
「お父さんとお母さん、どっちか一人だけでも会せたら、結人、うれしいだろうけど、悲しくもなると思ったから、オレがチケットもらえるまで待っててよかった」
 チケット1枚では、死んでしまった人を1人しか呼び出せないと考え、チケットが2枚になるのを要は待っていたのだ。
 そして、今回、結人に、結人が大好きな二人を会わせてあげられた。
「結人、すっごいうれしそうだったな」
 そういう要も、自分のことのように、うれしそうに笑っていた。
 そんな要を、メガネの奥の瞳で見ていた誠志が、話しかけてきた。
「要、お前はよかったのか?母親に会わなくて」
 死んだ人間に会えるのなら、要の亡くなった母親にも会えたはずだ。
 なのに、要はそれを選ばなかった。
 要がどれだけ母親を想っているかを知っている誠志だからこその、問いかけだった。
「へ?んー、まっ、それはいつか機会があったらね。それより、結人が見たことないような幸せそうな顔してて、それが見れただけで、オレは十分だな」
 ご褒美チケットでは、死んだ人間が生き返るわけじゃない。
 今、この時間に会えるだけだけど、もう二度と会えないと思っている人に、それでも会いたいと思う気持ちも、会えるうれしさも、同じように親を亡くした要は理解していた。
 それに、結人は、自分のせいで大好きな両親が死んだと思っている。
 それは、突然、前触れもなく訪れた悲しい出来事。
 きっと、伝えたい言葉がたくさんあるのだろう。
 大好き、も。
 ごめんなさい、も。
 言いたくても、ずっと、死んでしまった両親には、言えなかった。
 たとえ、この番外編だけだとしても、そんな気持ちの整理をつける機会をあげたかった。
 そして、あの優しい微笑みを浮かべていた結人の両親なら、結人を許し、受け止め、癒してくれるだろう。
 それは、要にはできない。
 結人の両親にしかできないこと。
「結人を今、一番幸せにできるのは、結人の両親だからさ。オレを応援してくれて、オレの願いを叶える機会をくれた読者様に、感謝だな」
 そう言って、楽しそうに笑っていたのに、誠志が何か言いたそうに要を見ていたので、要は誠志に、ニヤッと笑ってみせた。
「まっ、結人を一番に幸せにする男に、いつかはオレがなってやるけどな。結人の両親にも、もちろん、誠志にも負けないぜ」
 人気投票1位男は、ライバルの一人に指を突きつけて、宣戦布告した。


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