2015年12月25日

第19話時点、人気投票1位ご褒美(要) 2

「・・・んだよ、いったい?」
 視界を閉ざされるほどの、まばゆい光がおさまったのを感じて、要は不機嫌そうにぼやきながら、瞳を開いた。
 瞬間、眉をひそめて、数回、瞬きをした。
 おかしかったからだ。
 さっきまで、いつもの自分の城・・・生徒会室にいたはずなのに、目の前には、外の世界が広がっていた。
 いや、外というと、正確には、表現が少し違う。
 そこは、高い塀に囲まれた場所。
 手入れの行き届いた、きれいな和風の庭が広がっていた。
 要は、とりあえず、ゴシゴシと目を擦ってみたが、いきなりの瞬間移動現象は、変わらなかった。
 そこにあるのは、間違いなく、
「ここって、九条家の庭だよな?」
 見間違うはずのない、見覚えのある景色。
 要を失うことを恐れていた総代・・・いや、要を失うことで総代の地位を失うことを恐れていた総代に、囚われるように過ごしていた毎日。
 自由に外に出ることが許されていなかった、子供の頃に、毎日遊んでいた、要を育てた庭だった。
 要は、今、九条家の縁側に座って、それを見ていた。
 生徒会室にいたはずなのに。
 どうして、こうなったのか。
 考えられることは、人気投票1位のご褒美チケットとやらの効果、ただ一つだった。
 これが書いてあった『旅』なのだろうか。
「ったく、何をさせるつもりだ。九条家に帰ったって、あんまり楽しいことないのにな」
 やれやれと思いながら、いつものくせで、長く伸ばした前髪に手を伸ばした時、違和感を覚えた。
 ない?と。
 そう言えば、視界が妙に明るい。
 いつもなら、前髪がジャマをしているのに。
 前髪・・・あるけど・・・ない・・・。
 前髪が、短い。
「おーい、ちょっと待てよ」
 要は嫌な予感に包まれて、背後にあるふすまを開け、中に飛び込んだ。
 九条家の広い庭の中でも、この見慣れた景色がある場所には、要の部屋があるのだ。
 要は、自室の中に立てかけてあった鏡に、自分の姿を映してみた。
 そして、瞳を、驚きで見開いた。
 そこに映し出された姿は、17歳の要ではなかった。
 瞳が大きく、顔が小さく、体も手足も小さな、子供の頃の要の姿だった。
「はぁ?!オレ、ちっさ」
 中身はいつも通りなのに、体だけ、今みたいに、ダラダラと前髪を伸ばしていなかった頃に戻っていた。

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