2015年12月25日

第19話時点、人気投票1位ご褒美(要) 3

 なんか、体が小さくなって、5歳くらいに戻っていた。
 チビっ子になった要は、することがなくて、とりあえず、九条家の自室の畳の上で、ごろごろ転がっていた。
 たいへんな人生を歩んできた要は、あんまり物事に動じなくなっているので、とっても順応性が高い。
 とりあえず、今の状況を受け入れた。
 ただ、それでも、気になることはある。
「うーん、なんか、落ち着かないな」
 前髪が短いと、ソワソワする。
 誠志がいつもいつも、切るチャンスをうかがっている長い前髪がないと、変な感じだった。
 自分を守る鎧を、突然奪われたような感覚だった。
 成長するほど、どんどん母親そっくりになっていく自分の顔を隠していたものだから。
「オレは、ここで、チビで、なにすん・・・イテッ!」
 前髪が気になって、さらにごろごろしていたら、頭に何やら硬い物が当たった。
 痛みを与えた物を探してみると、畳の上に、空色の物体が転がっていた。
「うっわ、懐かしー。これ、密の積み木だよな」
 密が小さな頃、いつも遊んでいた、お気に入りの積み木だった。
 要があげたのだが、それ以来、寝る時も積み木を離さなくなった。
『あおは、にぃ』
 そういって、密はよく、要の色だと思い込んでいた空色の積み木を、せっせと積み上げていた。
 密にとって、要は空と同じ色らしい。
 その積み木を、要がボール代わりに投げて、小さかった密を泣かしてしまったことがあった。
 要に取られたからではなく、要に嫌われたのだと思ったらしく、世界が終わったような顔をして、要にしがみついて泣き出してしまった。
『にぃに、きらわれた・・・』
『ちがう、ちがう。ひそかをきらってない』
 慌ててそういって、抱っこしてあげたら、小さな密は安心して笑った。
 密は、小さな頃から、要お兄ちゃんが大好きだった。
 いつも、要の後ろを、ちょこちょこついてきた。
「密、かわいかったなぁ。今も、デカイくせに、中身かわいいけど。なんで誠志には、あのかわいさが分からないかね」
 要は、遠い昔の記憶を思い出しながら、懐かしさに顔を緩めた。
『あおは、にぃ。みどりは、ひぃ』
 ひぃは、密のこと。
 空色が要で、深緑が密だったらしい。
 懐かしい記憶だ。
「密の積み木はあるけど、密はいないのか」
 隣の部屋に続く襖を開けてみても、密はいなかった。
 そう思って、改めて、人がいないことの不思議に思い当たった。
 あの頃は、要のボディーガードや監視人が、いつも要の陰にいた。
 いらないのに、総代の指示で、中学までずっとつけられていた。
 そいつらもいない。
 というか、誰もいない。
 九条家の広い屋敷が、更に広く感じられるほど、人っ子一人いなかった。
 シンと静まり返った和の邸内は、どこか不気味さを感じる。
「どーすっかね」
 こんなところに飛ばされたのに、誰かに会えというわけではないのだろうか?

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