2015年12月30日

去年の学園祭は秘密だらけ 2

「えっと。要さん、むりやりされたんですか?」
 女装がなぜ、立場を守って、しかもケンカなのか分からなくて、結人はキョトンとした。
 そんな結人に、誠志は更に暴露するかのように、説明した。
「去年は、特に、第1生徒会と第2生徒会の確執が強かった上に、要に対する全校生徒からの敵意も強かったからな。統率・管理するために、要は今以上に、圧政を強いていた。そのせいで、反発が強くてな。要を辱めて笑ってやろうと、誰かが言い出したみたいだったな」
『現会長の九条要に、女装させてみようぜ』
と。
 そして、やらないと言い張っていた要に、学生たちが猛抗議した。
『会長は、その程度もできない方なんですか?』
『九条会長の力量は、その程度なんですね』
『九条家のご子息は、お心が狭いですね』
 そんなことを次々と毎日言われて、やらなければ違う意味で笑われる状況に、要が黙っているわけがなかった。
 やられたらやり返す男だった。
 ということで、いつものように、キレた。
『やってやろうじゃねぇか・・・。目を見開いて、よーく見とけ!』
 そうやって、本気になった要の女装の完成度は、高かった。
 その割に、堕ちないかっこよさと迫力に、学生たちは、全員白旗を上げた。
 普段、学生たちは、自分たちが見ている要の威圧的な態度に忘れがちだが、要は誠志が認めたほどきれいだった要の母親に、そっくりな顔をしているのだ。
 男っぽさを捨てて微笑めば、きれいなのだ。
 要は、学園の統治の為、一時的にそれを捨てたのだった。
 プライドも、かなりの数、川に流さないといけなかったが。
「そういうことで、要を笑おうとしていた学生たちの目論見は破れ、女装要におかしな支持者が増えた」
 九条かな子は、明徳学園で語り継がれる伝説の一つとなった。
「誠志、人の黒歴史を、ペラペラしゃべってんじゃねぇよ」
 苛立たしげに、机の上の荷物を払って、机に直接座った要は、ムスッとしていたが、結人が期待に満ちたキラキラな目で、要を見ているのに気付くと、優しいお兄ちゃん顔をした。
「ん?結人、どうしたの?」
「おれ、みたいです」
「・・・えっとぉ、何をかなぁ?」
 分かっていたが、最後の望みを託して、はぐらかしてみた。
 が、やっぱり、結人のお願いは、要の予感通りだった。
「要さんの、その時の写真」
「あ、オレもみたいでぇ。会長はんの晴れ姿」
「俺も、見せてもらえなかった。見たい」
 泉介や密だけなら、理由をつけて断ってもよかったが、要は結人のお願いを、断りきれない。
「・・・ゆ、結人。見ても、オレのかっこよさを、忘れないでね・・・」
 断腸の思いで、泣く泣く、要は結人に、女装時の写真を渡した。
 途端、結人のかわいいお目めが、ぱぁっと輝いた。
「わぁ!要さん、きれいだ!お母さんそっくり」
「へ?これが、会長はんなんか?うちの姉ちゃんたちより、きれいやで!」
「あやめさんが、生き返った」
 素直に感動する1年トリオに、怒ることができない要は、少しだけ言い訳をした。
「・・・はは。母さんより、背も高いし、筋肉あって、ごっついけどな・・・」
「だいじょうぶです!要さん、すっごいきれいです」
「・・・うん、その、ありがとな、結人。・・・でも、その笑顔が、なんか、胸に刺さる・・・」
「え?あれ?かなめさん、どうしたんですか?」
「なんでもないよ・・・結人・・・。古傷が痛んだだけさ・・・」
「ええ?!要さん、けがしてるんですか?!」
 4人で騒いでいると、誠志が「ちなみに」と言って、もう一枚、写真を出してきた。
「学園祭の時、他校生が暴れたからな。女装でフラストレーションがたまっていた要がとった行動が、これだ」
 写真には、嬉々として、暴れた学生たちを殴っている要の姿が写っていた。
 もちろん、女装姿で。
 明徳学園には、最強最悪の女がいると、他校にも、九条かな子は伝説を残した。
 さらに、誠志が、数枚の写真を結人に渡した。
 ケンカした後の、すっきり清々しい顔の要(女装版)。
 暑さに胸元を開けて、スカートまくり上げて、水を飲んでいる要(女装版)。
 疲れて、休憩にと、クマのぬいぐるみを抱き枕にして、無防備に寝ている要(女装版)
 何も知らない人間が見たら、仲の良い美形カップルにも見えそうな誠志(男)と要(女装版)のツーショットもあった。
「なんで、オレの黒歴史写真が、次々に出てくんだよ!」
「俺のパソコンに入っているからな」
「削除してやるよ!って、くそっ!!変なセキュリティかけやがって。解除しろ!」
「要女装版の支持者に、高く売れたな。学園の女王の異名で。まあ、最近は下火だが」
「香守家のご子息が、なに、小銭稼いでんだ!意味ねぇだろうが、ぼんぼんが!新手のオレいじめか?てめぇの財布の諭吉、全部生徒会で使ってやるから、よこせ」
 要の怒りを、しれっとした顔で受け流している誠志が、要と女装の要の写真を交互に見て、きょろきょろしている結人の頭をつついた。
「今年は、日向が女装するか?」


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