2016年01月05日

五十嵐大 リターンズ 3

 なのに・・・、
「何をやってんだ、テメェは?!」
 突然、二人の空間に、そんな声が響いたかと思うと、大の体は、きれいに空中を舞い、地面を何度も何度もバウンドしながら、大回転し、木にぶつかって、やっと止まった。
 その地面に倒れた大の体を、ゲシゲシ踏みつけてくる、結人と同じ制服姿の少年がいた。
 要であった。
 大は、要に回し蹴りされ、結人から盛大に、引き離されていた。
「お、お前は前の」
「・・・ああ?!ったく、結人との連絡手段を断ち切ってやったってのに、のこのこ現れやがって・・・。しかも、結人に手を出すとか・・・。この怒り、どうしてくれよう・・・」
 要は大の頭を、靴底で、グリグリと踏みつけてくる。
 痛い。
 痛い!痛い!痛い!
 地面を何度も手のひらで叩いて、ギブをうったえたのに、グリグリやめてくれない。
 大の顔が、地面にめり込んでいく。
 前回、大が出会った時の要は、優しげにも見えたが、今回は、最初から完全ブチ切れブーストモードだった。
 痛いだろうがぁぁぁぁぁぁ!!!
 い、いや、それより、気になることを言った!!
「お前がわざと、結人と俺の愛の営み(携帯電話)を奪ったのか?!」
「・・・ウルセェよ。オレはお前だけは、許さねぇ・・・」
「お、俺が何したって」
「テメェ、猫飼ってんだってな・・・。結人って名付けて・・・。結人が猫に見えるってわけか・・・」
 要は青筋のたった顔で見下ろしてくると、とんでもないことを言ってきた。
「結人が猫に見えるのは、オレだけの特権だー!!」
「知るかー!!」
「バキッ!!」
「ぎゃあ!!」
 反抗したら、大は殴られた。
 要のお怒りの理由は、まだあるようだった。
「・・・しかも、結人からかかってくる時の着メロが、Yuuの『あいしてる』だってな?!」
「だから、どうし」
「オレと、かぶってんじゃねぇか!!」
「知るかー!!」
「ゲシッ!!」
「おっふ!!」
「いつか、オレに向かって、結人にかわいく歌ってもらおうって、妄想してたのに、台無しにしやがってー!!」
 以上の理由により、要は大から、結人との通信手段を奪った。
 妄想の世界でぐらい、結人と幸せになりたいんだ!と、悲しい理由で。
 なので、今、その邪魔をした大を、怒りに任せて、グリグリと踏んでいるのだ。
 理不尽、極まりない・・・。
 大は、踏みつけてくる脚から逃げ出すと、要に指先を、ビシッと突きつけた。
「お前は、結人のなんなんだ!!」
「オレ?オレはな・・・」
 要はニヤッと笑うと、キョトンとして見ていた結人の細い肩を抱き寄せ、結人に極上の微笑みを向け、言った。
 制服のポケットから取り出した、鍵の束を、結人に見せながら。
「オレは結人と、合いカギを持ってる仲だぜ。なっ?ゆーいと」
「あ、はい!おれ、要さんと、いっしょです」
 結人も、にこにこと要を見つめ返し、制服のポケットから、猫のキーホルダー付きの鍵を取り出して見せた。
 あ、合鍵ーーーーーー?!
「ど、ど、ど、ど、ど、どういうことなんだ!結人?!」
 大は結人に詰め寄ろうとしたが、結人をひょいっと抱え上げた要に、阻まれた。
 そして、その要が、代わりに答えてきやがった。
 勝者の顔をして、にやぁっと。
「オレと結人は、そーいう、深―い仲だってことだよ」
「ど、どういうことだー?!」
「そいうこと♪」
 な、なんだ、それは?!
 それとは、なんだ?!
 結人は、寮に住んでたはずだ!
 寮の部屋の合鍵を、渡しちゃってるってことなのか?!
 合鍵なんて、そんな高校生に不似合いな、不埒な存在があるってことは・・・?!
 それって、それって、つまり・・・・・・結人の夜のお相手とか・・・?
 い、いや、もしかして、恋・・・人・・・?
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 瞬時に頭を駆け巡る嫌な単語に、大が絶叫した時、場違いな固い曲調の着メロがなった。
「ったく、こんな時に仕事かよ」
 要が、自分の携帯を見ながら、不機嫌そうに呟いた。
「結人、ごめんね。九条の会社のほうが、なんかあったみたいだ」
「要さん、大丈夫ですか?」
「うん、だいじょーぶ。夜には帰るから、いい子で待っててね」
 要は結人のほほに、ちゅっとキスをすると、手を振っていなくなった。
 結人に、キスしやがった!!
 それも、なんてうらやましいくらいに、自然に・・・ほっぺちゅーを・・・。
 許せん・・・!!
「だが、しかーし!!」
 ふっふっふっ。チャンス到来!!
 大は、心の中でそう呟くと、いってらっしゃーいと両手をいっぱい振るかわいい結人に、後ろからガバッと、抱きついた。

posted by ちぃ at 01:16| Comment(0) | 【小説】五十嵐大 リターンズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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