2016年01月21日

みんなの休日 2

「明日のお休み、おれ、みんなで、どこかに行きたいです!」
 生徒会室に集まっていたみんなを見ながら、結人はにこにこと、そう言った。
 でも、結人の突然の発言に、みんなが不思議そうに見つめてきたので、結人は不安になって、ごにょごにょと付け足した。
「み、みんなでいっしょに、でかけたことないから・・・。要さんや香守先輩忙しいし、みんなでいるところ、ビデオに撮れたらなって思って・・・」
 うつむきだした結人を見ていた密が、無表情のまま、誠志を指さした。
「なら、誠志が車を出す」
「何を勝手に決めている、密」
「誠志は、結人と行きたくないのか?遠足だぞ」
「どこで、そんな話になった・・・。まったく、相変わらずお前とは話が成立しないな」
 苛立たしげにタバコに火をつける誠志を、結人は大きな瞳でジッと見つめながら、誠志の制服の裾をつかんだ。
「香守先輩は、行けないですか?」
「明日か・・・。まあ、出れなくもないが」
 捨てられた子猫のような瞳で見上げてくる結人から目をそらしながら、タバコを吸っていた誠志が、今度は要を指さした。
「要の目は、泳いでいるな」
「要さん?」
「え?ええっと、結人。その」
 らしくない要の挙動不審な態度を、どうしたのかなと見ていた結人の頭を、要は撫でた後、「ちょっと待ってね」と笑顔で言ったかと思うと、くるりと後ろを向いて、机の上に乱雑においていた紙に、目を通した。
 要の秘書が作った、要の今後のスケジュールだ。
 要に休みの日は、ない。
「えっと・・・明日・・・。いや、あさって・・・しあさって・・・」
 隙間なくびっしりと埋められた予定を見て、頭を抱えた要に、結人は「・・・すみません」と謝った。
「おれ・・・わがままいいました。要さん、忙しいのに・・・」
 うるうるしながら、うつむいてしまった結人の細い肩を包むように、要は両手を置いた。
「結人、明日行こうぜ!」
「え、でも、かなめさん・・・」
「いいんだよ。結人がしたいこと叶えるって、約束しただろ?明日は、寝坊しないようにな?」
「あ、はい!」
 こみあげてくるうれしさを隠し切れず、笑顔でそういう結人に、泉介が後ろから飛びついてきた。
「結人、よかったなぁ。みんな、一緒やで」
「うん!おれ、うれしい」
 泉介と一緒になって、ぴょんぴょん跳ねる結人をほほえましそうに見ている要に、誠志は視線を向けた。
「どうする気だ。無理だろうが」
 分刻みのスケジュール表を見ながら、小ばかにしたように言う誠志に、要はキレ気味に言い切った。
「どうにかして見せる!」
 結人のお願い事を断れる男は、第1生徒会にはいないようだ。


 そんなわけで、結人とみんなの休日が始まった。
posted by ちぃ at 16:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 【小説】みんなの休日 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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