2015年12月20日

ほのぼの夏の旅行 1

読者様から、リクエストいただきました(^▽^*)♪
ほのぼのとした、旅行小説を読んでみたいとのことです。
ということで、夏の旅行編です\(⌒▽⌒)/


『ほのぼの夏の旅行』


 要が、かんかんと照りつける太陽を指さし、結人たちを見た。
「今の季節は?!」
「夏ー!」
 結人や泉介や、無表情ながら密まで、楽しそうに声を上げた。
「そう!!そして、夏と言えば?」
「海ー!」
「そう!!ということで、やってきました、九条家プライベートビーチ!!」
「わー!!パチパチパチ!!」
 
 そう、ここは、九条家が所有するプライベートビーチだった。
 結人がもじもじと、
「あの・・・おれ・・・人工島のじゃない海を、見てみたいです」
と言ったから、要が、即、叶えた。
 それだけのことなのだ。
 この、高級リゾート地の、真っ青な海を独占したのは。
 要の結人への愛に、ケチるお金など、一銭もなかった。


「海、すっごくあおいね、泉介!」
「青いでー!」
 広い海を前にすると、なんでか、大声で叫びたくなるのが、人のさがというもの。
 ということで、結人と泉介が、波打ち際で、はしゃいでいた。
「青い・・・」
 広い海を前にしても、マイペースに叫ばないのが、密。
 でも、三人とも、楽しそうだった。
 そんな中、どこまでも続く青い海に感動していた泉介が、ふいに思いついたように、結人に声をかけた。
「結人、泳げへんよな?海きて、なにするんや?」
「泉介ぇ、バカにするなぁ!・・・むー、いいよ。おれ、砂のお城作るから」
「せやな。結人にはお砂遊びがお似合いや。結人が波に向かって、バタフライとかしだしたら、おかしすぎやで」
 結人の体育の授業のだめっぷりを思い出し、泉介がからかうように、楽しそうにしていた結人の頬をつついた。
 とたん、ぷぅっとむくれた結人だが、じゃれつくように、泉介に反撃しだした。
「泉介!ちょっとだけ、おれより運動できるからって、ばかにするなぁ!」
「なーにいってんや、ちょっとやあらへんで」
「結人は、浮き輪が似あう。だから、大丈夫だ。かわいい。小さい子用だ」
「密まだ、ばかにするなぁ!おれ、おとな用がいい」
 結人、泉介、密たちから、楽しげな声が上がる。
 さっそく靴を脱ぎ捨てて、白い砂浜の熱をじかに感じながら、きゃっきゃきゃっきゃとはしゃぎだした結人たち1年生トリオを見る要の瞳は、穏やかだった。
 まるで、我が子を見つめる保護者(父親)のように、穏やかだった。
 それと反比例するかのように、誠志は暑さから逃れるようにシャツのボタンをはずしながら、鋭く冷ややかな視線を向けてきた。
「・・・夏か。夏と言えば、本編では、日向がアイツに×××されて、おまけに○○○までされて、日向も要も再起不能になっている時じゃなかったか?」
「本編とかいうなー!!幸せならそれでいいんだよ!!この世界(番外編)には、あんなことは起きてない!!」
 メガネの奥の切れ長な瞳で射抜いてくる誠志の背中を、要はげしげし蹴った。
 そして、
「そ・れ・に♪」
と、続けた。
「結人のかわいい水着姿がおがめる機会、逃せるか!!」
「日向の裸なら、見慣れているだろうが」
「わかってないなぁ、誠志。水着と裸は別物♪夏の健康的な日差しの下、青い海と、かわいく爽やかな結人の水着姿と、満面の笑顔。萌えるだろうが」
「要、気持ち悪いな」
「健康的な萌えは正義だ。テメェの卑猥思考回路に、刻んどけ!!ということで、ゆーいと。水着は持ってきたかな?」
「はい♪要さんがいったように、ちゃんと、学校指定の水着、もってきました」
 楽しそうに邪気のない笑顔で答える結人の頭を、要は「えらいえらい♪」と、撫でてあげた。
 そんな二人を見ていた密が、ボソッと無表情につぶやいた。
「・・・要が変態だ・・・」
「なんで変態なんだよ?!」
「・・・要、昔、いってた。スクール水着にハァハァする奴は、変態だって」
「は?!オレ、そんなこと教えたか?ってか、ハァハァしてねぇよ」
 密は少し考え込むように黙ったが、突然、結人の手をつかんで、すたすた歩きだした。
「・・・忘れた。それより、俺も結人の水着姿みたい。・・・いくぞ、結人」
「え?え?え?」
 意味がわからず、密と要の顔をきょろきょろと交互に見ていた結人は、密に引きずられるままに、更衣室に連れて行かれた。

ほのぼの夏の旅行 2

 数分後、更衣室から出てきたのは、密だけだった。
「結人はどうしたんだ?」
 不審に思った要がたずねると、密が無言で、更衣室のドアに隠れている結人を指さした。
「結人?」
「要さん・・・あのね・・・その・・・。おれね・・・わすれてて・・・」
 何をだろうと要が結人に近づくと、結人が恥ずかしそうに、水着姿の自分の体を手で隠していた。
 けれど、隠しきれていない結人のきれいな肌についている、いくつものうっ血した痕が、要の目に飛び込んできた。
 誰かが、あの行為の最中につけたであろう痕が・・・。
 要は自分が着ていたパーカーを結人に着せると、結人の首元までチャックをしめた。
「いいんだよ。結人のせいじゃないからね」
「要さん・・・」
 要は、結人を安心させるように、結人の頭をなでなでしてあげると、くるりと反転した。
 そして・・・キレた。
「・・・誰だ?結人に痕つけんなっていっただろうがぁ!!」



 そんな光景を、遠くから見つめる女性たちがいた。
 プライベートビーチに無断で入り込んだ彼女たちは、大騒ぎをする結人たちを見て、つぶやいていた。
「お金持ちがいるかもと思ったけど・・・」
「あの子たち・・・レベル高すぎない?」
「ちょーかわいい!ちょーイケメンだらけ!」
「きゃー!」
と。
 プライベートビーチという、玉の輿にのれるかもしれない素敵な夢の場所にいた男子たちの容姿の良さに、彼女たちは見とれていた。
 将来のお姫様生活をうっとりと思い描きながら、女性たちは近づこうとしたが、突然目の前に現れ、立ちふさがった男によって、阻まれた。
 男は、この炎天下だというのに、きっちりと乱れなくスーツを着込んだ、要の第一秘書である片桐だった。
「申し訳ございません、お嬢様方。ご多忙な要様の貴重な貴重な、あまりにも貴重なプライベートな時間を壊さないでいただけますか?」
「え、えっとぉ、私たちはただ、お友達になりたいなぁって思ってぇ」
「そうそう。じゃまなんてしないんだからぁ」
 わざとしなを作って、甘えたようにしたったらずに話す女性たちの態度を見て、片桐は絶対に会わせるわけにはいかないと心に決め、熱く語りだした。
「要様はお可哀想な方なのです!結人さんに自分の欲望で触れないと誓ったばかりに、読者投票で要様×結人さんを見たいと最も票を獲得しているというのに、話が進むにつれ、結人さんとのそういったシーンが削られるという、辛い立場にいらっしゃるのです!そんな理性と戦う要様の、せめて、結人さんの水着姿が見たいという望みだけでも叶えて差し上げたいのです!」
 要の幸せの為に生きる男、片桐。
 その堅物な中には、熱いものがあるのだ。
 だが、
「片桐ー!なにを力説してんだぁー!」
 力を込めて話す片桐の頭に、要が投げ飛ばした靴が直撃した。

ほのぼの夏の旅行 3

「まったく・・・。どうせオレは、欲望と理性と欲望と欲望と欲望の間で、戦ってますよーだ・・・」
 要が片桐の過保護っぷりに頭を抱えていたら、結人が眉尻を下げて、要の服をつかんできた。
「・・・要さん、おれ、きづかなくて、ごめんなさい・・・」
「大丈夫だよ、結人。気にしなくていいから」
 しょぼんとする結人の頬を、むにむにしてやると、結人は何を思ったのか、両手にこぶしを作って、要を真剣に見つめてきた。
「おれ、要さんなら、いいです。要さん、やさしいし、いつも助けてくれるし、ごはん作ってくれるし。それに、おれ、読者さまの期待にこたえます!」
「い、いや、結人、そこはがんばらなくても」
「がんばるです!」
 かわいい顔して、どこかずれたところで男らしさを時々発する結人は、こんな感じになったらなかなか意見を変えない。
 さて、どうしようかなと、要はしばし考えたが、結人の瞳が決意に燃えているので、じゃあと試すように結人に顔を近づけた。
「じゃあ、キスだけ本気だしてみてもいい?」
 結人は、どこかで聞いたことあるようなセリフのような気がしたが、思い出せなかったので、元気よく「はい!」と答えた。
「ありがと」
 要はくすっと笑ってから、結人の顔を両手で包んで引き寄せた。
 ちゅー。
「要、結人に何してるんだ・・・」
「会長はん!ずるいで!」
「まぁ、たまには、要にもいい目をみせてやれ」
 愛しの結人にキスする要を止めようとした密と泉介は、誠志に首根っこをつかまれ、引き留められた。
 そのため、要の結人へのキスは、まだまーだ、続いていた。
 とっても、とっても、とぉーっても、濃厚なのが・・・。
 要が本気を出すと、すごいことを、結人は忘れていた。
「・・・んん・・・」
「結人、ありがとうね」
 結人が苦しそうに声をあげたので、要は名残惜しかったが、結人の唇を離してあげた。
 途端、結人がへにゃあとなった。
「・・・かなめさぁん・・・」
 結人の顔が、真っ赤な顔で、トロンととろけていた。
「・・・おれ、へん・・・。からだ・・・あつい・・・」
 実は本気を出すとテクニシャンな要に、結人は腰を砕かれていた。
 崩れそうになる体を、要が支えてあげた。
 要は心の中でこっそり、ごめんねと呟くと、結人を抱え上げた。
「暑さにやられたかな?じゃあ、海入って、冷まそうか?」
「・・・おれ・・・およげない・・・です・・・」
「抱っこしててあげるから、大丈夫だよ」
「・・・うん」
 いまだ、体のほてりから抜け出せない結人を、要は抱えて歩いてあげた。
 その背を追いかけるように、密と泉介が抗議してきた。
「・・・要、ずるい・・・」
「会長はん、なに、二人だけの世界、作っとんのや!」
 その声の隙間に、誠志がボソッとつぶやいた。
「まぁ、たまには海でヤるのも、悪くないか」
「ええ!海でされるの?」
 結人が、驚きの声を上げた。
「しない、しない。オレが守るから、大丈夫だよ」
 要が安心させるように結人のおでこに、ちゅっとキスをしたのを合図にしてか、その後、結人の争奪戦が起きた。



 それは、夏の日のこと。

 シリアスな本編から削除された、起こらなかった、夏の出来事。