2015年12月25日

第19話時点、人気投票1位ご褒美(要) 1

第19話時点、人気投票1位をとった要の
ご褒美小説です☆



第19話時点、人気投票1位ご褒美(要)



『第19話時点、人気投票1位を獲得された九条要様に、
 なんでも願いが叶うチケットをお送りさせていただきます。

 ただし、いつもいつも、人のことばかり考えている九条要様に直接あげても
 どうせまた、人にあげたり、人のために使ったりして、
 なんのための人気投票ご褒美なのか、分からなくしてしまうので、
 今回は、魔法のチケットを、こちら側で勝手に使わせていただきます。

 九条要を1位にしてくださった、読者のみなさま、
 九条要ファンのみなさまへの恩返しと思って、
 この旅路を、お楽しみ下さいませ』


 生徒会室で見つけたカードを読んで、要は「は?」と変な声を出した。
 カードには上記のような言葉が、印字されていた。
 例の、作者から届く人気投票1位ご褒美チケットのようだが、いつもと書いてあることが違う。
 ご褒美チケットを、勝手に使うとか、ご褒美なのか?
 だいたい、
「旅って、なんだよ?」
 そう呟いた瞬間、要だけがいた生徒会室が、まばゆい光に包まれた。

 人気投票1位おめでとうの魔法のチケット効果、発動である。


第19話時点、人気投票1位ご褒美(要) 2

「・・・んだよ、いったい?」
 視界を閉ざされるほどの、まばゆい光がおさまったのを感じて、要は不機嫌そうにぼやきながら、瞳を開いた。
 瞬間、眉をひそめて、数回、瞬きをした。
 おかしかったからだ。
 さっきまで、いつもの自分の城・・・生徒会室にいたはずなのに、目の前には、外の世界が広がっていた。
 いや、外というと、正確には、表現が少し違う。
 そこは、高い塀に囲まれた場所。
 手入れの行き届いた、きれいな和風の庭が広がっていた。
 要は、とりあえず、ゴシゴシと目を擦ってみたが、いきなりの瞬間移動現象は、変わらなかった。
 そこにあるのは、間違いなく、
「ここって、九条家の庭だよな?」
 見間違うはずのない、見覚えのある景色。
 要を失うことを恐れていた総代・・・いや、要を失うことで総代の地位を失うことを恐れていた総代に、囚われるように過ごしていた毎日。
 自由に外に出ることが許されていなかった、子供の頃に、毎日遊んでいた、要を育てた庭だった。
 要は、今、九条家の縁側に座って、それを見ていた。
 生徒会室にいたはずなのに。
 どうして、こうなったのか。
 考えられることは、人気投票1位のご褒美チケットとやらの効果、ただ一つだった。
 これが書いてあった『旅』なのだろうか。
「ったく、何をさせるつもりだ。九条家に帰ったって、あんまり楽しいことないのにな」
 やれやれと思いながら、いつものくせで、長く伸ばした前髪に手を伸ばした時、違和感を覚えた。
 ない?と。
 そう言えば、視界が妙に明るい。
 いつもなら、前髪がジャマをしているのに。
 前髪・・・あるけど・・・ない・・・。
 前髪が、短い。
「おーい、ちょっと待てよ」
 要は嫌な予感に包まれて、背後にあるふすまを開け、中に飛び込んだ。
 九条家の広い庭の中でも、この見慣れた景色がある場所には、要の部屋があるのだ。
 要は、自室の中に立てかけてあった鏡に、自分の姿を映してみた。
 そして、瞳を、驚きで見開いた。
 そこに映し出された姿は、17歳の要ではなかった。
 瞳が大きく、顔が小さく、体も手足も小さな、子供の頃の要の姿だった。
「はぁ?!オレ、ちっさ」
 中身はいつも通りなのに、体だけ、今みたいに、ダラダラと前髪を伸ばしていなかった頃に戻っていた。

第19話時点、人気投票1位ご褒美(要) 3

 なんか、体が小さくなって、5歳くらいに戻っていた。
 チビっ子になった要は、することがなくて、とりあえず、九条家の自室の畳の上で、ごろごろ転がっていた。
 たいへんな人生を歩んできた要は、あんまり物事に動じなくなっているので、とっても順応性が高い。
 とりあえず、今の状況を受け入れた。
 ただ、それでも、気になることはある。
「うーん、なんか、落ち着かないな」
 前髪が短いと、ソワソワする。
 誠志がいつもいつも、切るチャンスをうかがっている長い前髪がないと、変な感じだった。
 自分を守る鎧を、突然奪われたような感覚だった。
 成長するほど、どんどん母親そっくりになっていく自分の顔を隠していたものだから。
「オレは、ここで、チビで、なにすん・・・イテッ!」
 前髪が気になって、さらにごろごろしていたら、頭に何やら硬い物が当たった。
 痛みを与えた物を探してみると、畳の上に、空色の物体が転がっていた。
「うっわ、懐かしー。これ、密の積み木だよな」
 密が小さな頃、いつも遊んでいた、お気に入りの積み木だった。
 要があげたのだが、それ以来、寝る時も積み木を離さなくなった。
『あおは、にぃ』
 そういって、密はよく、要の色だと思い込んでいた空色の積み木を、せっせと積み上げていた。
 密にとって、要は空と同じ色らしい。
 その積み木を、要がボール代わりに投げて、小さかった密を泣かしてしまったことがあった。
 要に取られたからではなく、要に嫌われたのだと思ったらしく、世界が終わったような顔をして、要にしがみついて泣き出してしまった。
『にぃに、きらわれた・・・』
『ちがう、ちがう。ひそかをきらってない』
 慌ててそういって、抱っこしてあげたら、小さな密は安心して笑った。
 密は、小さな頃から、要お兄ちゃんが大好きだった。
 いつも、要の後ろを、ちょこちょこついてきた。
「密、かわいかったなぁ。今も、デカイくせに、中身かわいいけど。なんで誠志には、あのかわいさが分からないかね」
 要は、遠い昔の記憶を思い出しながら、懐かしさに顔を緩めた。
『あおは、にぃ。みどりは、ひぃ』
 ひぃは、密のこと。
 空色が要で、深緑が密だったらしい。
 懐かしい記憶だ。
「密の積み木はあるけど、密はいないのか」
 隣の部屋に続く襖を開けてみても、密はいなかった。
 そう思って、改めて、人がいないことの不思議に思い当たった。
 あの頃は、要のボディーガードや監視人が、いつも要の陰にいた。
 いらないのに、総代の指示で、中学までずっとつけられていた。
 そいつらもいない。
 というか、誰もいない。
 九条家の広い屋敷が、更に広く感じられるほど、人っ子一人いなかった。
 シンと静まり返った和の邸内は、どこか不気味さを感じる。
「どーすっかね」
 こんなところに飛ばされたのに、誰かに会えというわけではないのだろうか?