2015年12月27日

ホワイトデー企画(誠志×結人) 1

 たったったと、軽快な足音を残しながら、結人は生徒会室まで走ってきた。
「かなめさーん」
 早く会いたくて、結人は、ガラッと勢いよく扉を開けた。
 でも、生徒会室に、要はいなかった。
 要はよくいなくなるので、いざ探すとなると、意外に会えない。
「んーと?要さん?かーなーめーさーん」
 結人は、生徒会室の机の下にもぐったり、机の引き出しを開けたり、ロッカー開けたりと、きょろきょろと要を探していたら、さすがに、誠志が呆れたように声をかけてきた。
「何をしている、日向。要に会いに来たのか?」
「はい!要さん、どこにいるんですか?」
「要なら、逃げた」
「え?逃げ・・・えっと・・・。まさか・・・お、おれからですか?」
 結人が、ガンとショックを受けて、瞳をうるうるさせていたら、誠志が自分の携帯に、あるメールを表示させた状態で、結人に見せてきた。
 誠志の妹の、沙希からのメールだった。
『お兄様!聞いてくださいな。あの蛇女朝霧京華ってば、バレンタインに要様に、生蛇のチョコレートかけを送って、嫌がらせしていたのに、今度はホワイトデーに、蛇の燻製を要様に送る気なんですのよ。私、香守家の長女として、負けませんわ!特製媚薬入りマシュマロ香守家の香りつきで、今度こそ要様のかわいいアソコを、トロットロのビンビンのガチガチにして、おいしく頂きますすわ❤』
「あー・・・」
 結人から、なんといっていいか分からない言葉が出てしまう。
 相変わらずの勢いを持った沙希は、健在のようだ。
 そして、要の大の蛇嫌いを作った原因の京華も、相変わらずのようだ。
 その、嫌がることをして楽しむ、屈折した愛が・・・。
 要は、沙希とは仲がいいので、ある程度のことは目をつむっているようだが、京華と蛇はどう転んでもダメなようで、それで逃げたのだろう。
 誠志に押し付けて・・・。
『誠志!!オレが戻るまでに、蛇、片づけておいてくれ!!てか、絶対に片づけとけ!!』
『それが、物を頼む態度か?』
『神様!仏様!誠志様!お願いです!オレの視界に、蛇をいれないでください!ということで、よろしくー』
 そんな感じで、いなくなった。
 ホワイトデーが終われば、帰ってくるのだろうが。
 でも、今日は、会えないということだ。
「そっかぁ。要さん、バレンタインの時、送られてきた荷物見て、泣きそうだったもんなぁ」
 要が怯えていた珍しい光景を思い出して、しかたないかなと、結人は思うしかなかった。
 でも、メールを見て、気になったことだけ、誠志に聞いてみた。
「あの、要さんは・・・その」
「なんだ?」
「沙希ちゃんたちから、バ・・・バレンタインのチョコを、その・・・もらったんですか?」
「沙希は用意していたが、要は受けとらなかったみたいだな。だから、ホワイトデーにこんな戦いをしているんだろう」
「そ、そっか・・・」
 バレンタインの時、結人は要に、手作りチョコをもらった。
 バレンタインは、好きな人にチョコをあげる日だと、そう言われて。
 なんだか、空気が甘くて、優しくされて、そのまま、なんか、チョコプレイという、エッチなことをしてしまったけど。
(あのとき、お、おれ、どうかしてた・・・。おれ・・・すごい、えっちだった)
 思い出すと、すごく恥ずかしくて、それを隠せる器用さもなくて、結人は顔を真っ赤にした。
「じゃ、じゃあ・・・、ホワイトデーは、要さん、あげたりするのかな・・・?沙希ちゃんたちに・・・」
「やる気なら、逃げてないだろう」
「そ、そっか・・・。えへへ・・・なんか、うれしい・・・かも」
 結人だけにチョコをくれて、他の人から受け取ったりもしてなくて、なんだか、安心してしまった。
 なんの安心なのか、結人にもよくはわからなかった。
 でも、なんだかうれしさで、顔がにやけてしまう。
(おれだけなんだ・・・えへへ)


ホワイトデー企画(誠志×結人) 2

 そんな結人を、誠志はジッと見つめて、観察した。
 なんだか今日の結人は・・・何かが、増していた。
 影がないというか、怯えがないというか、キラキラしていた。
 無防備すぎて、捕食したくなる雰囲気を、全身から醸し出していた。
 色気もまとっている。
(・・・なんだ?)
 不審がる誠志の視界に、結人がギュッと大切そうに握りしめている、2つの物が目に入った。
「日向、何を持っている?」
「あ、これですか?」
 結人は、小さな包み紙と、一枚のカードを持っていた。
「カードは、作者(おかあさん)が『要に渡してね』って。こっちの包みは、要さんへのお礼です。ホワイトデーは、バレンタインにチョコをくれた人に、お礼を渡す日だからって、作者(おかあさん)が教えてくれたから。おれ、チョコもらったから」
「見せてみろ」
 誠志は、結人からカードを受け取って、印字された文面を呼んだ。
『本日は、ホワイトデーでございます。
 見たいCP投票、要×結人で、相変わらずの、1位独走状態、及び、
 更に票を延ばしている要様に、
 結人様を、ホワイトデーのお菓子のように味わう権利を、差し上げます。
 なお、バレンタイン同様、結人様はホワイトデーの魔法により、
 セックス等の行為を、嫌がりません』
「なるほどな。日向がおかしいのは、このせいか」
「?おれ、どこか、おかしいですか?あ、ねぐせかな?」
 ぴよんぴよん跳ねていても、いつも気にしない寝癖を、結人は手の平で、てしてしと触った。
「理解していないわけか」
「?」
 大きな目で、不思議そうに見上げてくる結人を、さて、どうするかと誠志は思っていたが、ふとカードを裏返して、なんとなく、どうするか決めた。
 カードの裏側には、こう印字されていた。
 作者からのメッセージが。
『っていうか、要さぁ、そんだけ読者様に支持されて、
 一人勝ち状態で「その優しさで結人を幸せにして!」って言われてんなら、
 もう、つきあっちゃえば?
 さっさと食って、物にしろ!
 ってか、むしろ、めんどくさいし、結婚する?
 合鍵渡してる仲だし、ご飯ずっと作るとか、一生養うとか、
 プロポーズっぽいこと言ってなかった?』
 誠志は、カードをくしゃっと握りつぶすと、ゴミ箱に投げ捨てた。
 要に渡すように頼まれたカードがなくなって、結人がおろおろしだした。
 その結人から、結人が手に持っていた透明の包みも誠志は取り上げて、中身を見た。
 学園の売店かコンビニででも買ったのか、小さな安物のマシュマロが一つだけ入っていた。
 お金がない結人の、精一杯のがんばりなのだろう。
 結人を溺愛している要なら、こんな安物でも、結人から貰ったら激しく喜ぶのだろう。
 感激しすぎて、泣くかもしれない。
 要へのプレゼントも、カードみたいに捨てられると思って、必死にマシュマロを取り返そうとする結人の頭を、誠志は片手で押さえつけていた。
 高身長の誠志と、低身長の極みの結人では、身長も手の長さも違い過ぎて、届くわけも取り返せるわけもなく、結人は、ばたばたばたばたしていた。
「香守先輩、かえしてくださいー」
「低い身長だな」
 そう言いながら、結人を笑いながらも、誠志はプレゼントは捨てずに、結人に返してやった。
 手元に戻ってきた包みを見て、結人は安心したのか、うれしそうにホッと息をはいて、にこにこ笑った。
 要に渡せるときのことでも、考えて、そんな笑顔をしているのだろうか?
 誠志の中に、イラッとしたものが、芽生えた。
「日向・・・」
 にこにこ幸せそうな結人に、誠志はおもむろに、自分がかけていた伊達メガネを、かけてみた。
「お前は、似合わないな」
「だって、おれ、香守先輩みたいに、はなが高くないから・・・」
 誠志の眼鏡を結人がかけると、鼻先でひっかかって、ずれずれで、いわゆる、萌え眼鏡状態だった。
「それでも、当たらないように、ずらさないといけないがな」


ホワイトデー企画(誠志×結人) 3

「・・・え?」
 自分の鼻先とメガネを触っていた結人が、そう小さく呟いたら、誠志の指先に、急にあごをつかまれ、くいっと上を向かされた。
(あ・・・キス・・・される・・・)
 そう思ったけれど、結人はなんだか顔をそらせなくて、視線を泳がせながら、ゆっくりまぶたを閉じた。
 いつもと違いすぎる素直な結人を、誠志はジッと見ていたが、結人の鼻にかかっている眼鏡の位置を少し直して、結人を焦らすと、困りだした結人の唇に、唇を重ねた。
 結人が応じるように、細かくぷるぷると震えながらも、一生懸命に背伸びをした。
「・・・ん・・・」
 誠志の制服のシャツをつかんで、誠志に体重を預けて、体を支えながらのキスは、そう深くならずに、ゆっくり離された。
 誠志に、こんな風な優しいキスをされると、なんだか恥ずかしかった。
 メガネをかけていない、いつもと違う誠志の瞳に、なんだかどきどきした。
(・・・かがみせんぱいの、ひとみ・・・きれい・・・)
 結人は、火照っていく顔を隠すように、うつむいた。
 でも、その場から動けなかった。
 誠志の制服のシャツを、きゅっとつかんだままだった。
「今日は、逃げないんだな?」
「・・・だって・・・おれ・・・」
 なんか、変だった。
 誠志が相手なのに、怖くなかった。
 むしろ・・・うれしいような・・・。
 誠志にキスされたことが・・・。
(どうしたんだろう・・・、おれ・・・。また・・・・へん・・・)
「逃げないならヤるが、どうする気だ?」
「そ、そんなこと・・・いわれても・・・おれ・・・」
 気が付けば、さっきまで重なり合っていた結人の唇を、誠志の親指の腹で、ゆっくりなぞられていた。
 自分の唇の柔らかさが、自分でもわかってしまう感覚。
 誠志の男らしい指先と、大きな手が、触れてくれている不思議な圧力。
 それだけの動きなのに、心地よい感覚を、全身で覚えてしまっていた。
 もっといっぱい、触ってほしいような・・・。
 もっと、違うところも、いっぱい、触ってほしいような・・・。
 だから、結人は、わけがわからないまま、真っ赤な顔で、こくんと頷いていた。
 逃げないから・・・してほしい気持ちを、口にできないから、頷いて伝えた。
「了承したわけか?」
 疑問形で言ったが、誠志は結人が何かを言う前に、その唇を、もう一度奪った。
 今度は、深く、舌を入れて、中まで味わうように。
 結人は、とろっとしていく瞳を、ゆっくりと閉じた。
 生徒会室のソファーに押し倒されているのに、自然に受け入れていた。
 そんな、自分の腕の中にいる結人を見て、誠志が満足そうに、薄く笑った。

(要、逃げたお前が悪い。日向は、もらっておくからな)