2015年12月30日

去年の学園祭は秘密だらけ 1

読者様に、明徳学園の学園祭を見たいとのリクエストを
頂いたので、書いた小説です\(⌒▽⌒)/



去年の学園祭は秘密だらけ


『去年の学園祭 王様のマル秘ネタ編』


 第1生徒会室は、本日、大掃除日。
「んー!んくぅー!」
 結人が、椅子に乗って、大きな箱を、上の棚にいれようとしていた。
 でも、棚が高すぎる。
 箱の中の荷物が多すぎる。
 背伸びをして、両手をいっぱいに伸ばして、がんばっているのに、よろよろするばかりで、入らない。
「んー!んんん!」
「どうして、結人は喘いでるんだ?」
「ば、ばかぁ!あえいでないよ!密!」
 棚との戦いでがんばっていた結人から、たしかに、変な声が出てた。
 でも、そういう意味の声じゃないのに、密には喘いでいるように聞こえたみたいだ。
「がんばってるんだよ!」
「結人ががんばって、喘いでいる?」
「ちがーう!」
 結人が、顔を真っ赤にして、怒っていたら、急に、箱を持つ手が、軽くなった。
 見上げてみれば、要が結人の背後から荷物を貰い受けて、棚に入れてくれていた。
「ゆーいと。結人はムリして、重い物持たなくていいよ。力自慢がそろってるんだからさ」
 結人の頭をなでなでした後、「にしても・・・」と、要は後ろを振り返った。
「片付かねぇな。なんでだよ」
 生徒会室の床にも机にも、物がごちゃごちゃと、あふれていた。
 かなりの物を捨てたはずなのだが、一度押し込んでいた棚から出したら、片付いていた物が入らない掃除の不思議現象に陥っていた。
「会長はん、もう、休憩にしようや。オレ、疲れたでー」
 泉介がねをあげたが、さすがに座る場所もない状態では、休むにも休めない。
 コーヒーメーカーも、どこかへ迷子になっていた。
 冷蔵庫の扉も、色々な物で、ふさがれていた。
「んー。まいったな。・・・って、誠志、お前も手伝えよ。何見てんだよ?」
 きっちりした性格の誠志は、掃除嫌い&苦手&めんどくさがりがいる生徒会では、貴重な掃除要員だったが、何やらさぼって、何かを見ていた。
「去年の学園祭の写真が出てきたからな。要の」
 誠志が言い終わる前に、要が誠志の手から、写真を奪い取った。
 光の速さだった。
 要はついに、光速を超えたようだ。
「よ、よけーなもん見てねぇで、さっさと働け!」
「学園・・・祭?があったんですか?」
 何やら動揺している要を、不思議そうに、首を傾けてみていた結人が、ふと気になって、誠志に聞いてみた。
 この学校に、学園祭があったのは、初耳だった。
 ここは、澱みに対抗する人間を育てる学校だ。
 学生たちは、澱みに対する仕事もこなしていて、忙しいから、普通の学校のような行事がない。
 それに、秘密ごとも多いから、外部の人間も、あんまり入れない。
 でも、去年が学園祭をしたらしい。
「ああ、去年は、希望者が多かったからな。今年は今のところ予定はないが、去年は要が」
「誠志君、黙ろうか?」
 要が威圧するように、拳を握っていたが、誠志はかまうことなく、要の秘密を暴露した。
 要の最愛の人・・・結人に。
 好きな人にかっこつけたい男の子の気持ちを、グリグリと踏みつぶすかのように。
「要が女装した」
「したくてしたんじゃねぇ!させられたんだ!オレは、立場を守ったんだよ!ケンカを買ったんだよ!」


去年の学園祭は秘密だらけ 2

「えっと。要さん、むりやりされたんですか?」
 女装がなぜ、立場を守って、しかもケンカなのか分からなくて、結人はキョトンとした。
 そんな結人に、誠志は更に暴露するかのように、説明した。
「去年は、特に、第1生徒会と第2生徒会の確執が強かった上に、要に対する全校生徒からの敵意も強かったからな。統率・管理するために、要は今以上に、圧政を強いていた。そのせいで、反発が強くてな。要を辱めて笑ってやろうと、誰かが言い出したみたいだったな」
『現会長の九条要に、女装させてみようぜ』
と。
 そして、やらないと言い張っていた要に、学生たちが猛抗議した。
『会長は、その程度もできない方なんですか?』
『九条会長の力量は、その程度なんですね』
『九条家のご子息は、お心が狭いですね』
 そんなことを次々と毎日言われて、やらなければ違う意味で笑われる状況に、要が黙っているわけがなかった。
 やられたらやり返す男だった。
 ということで、いつものように、キレた。
『やってやろうじゃねぇか・・・。目を見開いて、よーく見とけ!』
 そうやって、本気になった要の女装の完成度は、高かった。
 その割に、堕ちないかっこよさと迫力に、学生たちは、全員白旗を上げた。
 普段、学生たちは、自分たちが見ている要の威圧的な態度に忘れがちだが、要は誠志が認めたほどきれいだった要の母親に、そっくりな顔をしているのだ。
 男っぽさを捨てて微笑めば、きれいなのだ。
 要は、学園の統治の為、一時的にそれを捨てたのだった。
 プライドも、かなりの数、川に流さないといけなかったが。
「そういうことで、要を笑おうとしていた学生たちの目論見は破れ、女装要におかしな支持者が増えた」
 九条かな子は、明徳学園で語り継がれる伝説の一つとなった。
「誠志、人の黒歴史を、ペラペラしゃべってんじゃねぇよ」
 苛立たしげに、机の上の荷物を払って、机に直接座った要は、ムスッとしていたが、結人が期待に満ちたキラキラな目で、要を見ているのに気付くと、優しいお兄ちゃん顔をした。
「ん?結人、どうしたの?」
「おれ、みたいです」
「・・・えっとぉ、何をかなぁ?」
 分かっていたが、最後の望みを託して、はぐらかしてみた。
 が、やっぱり、結人のお願いは、要の予感通りだった。
「要さんの、その時の写真」
「あ、オレもみたいでぇ。会長はんの晴れ姿」
「俺も、見せてもらえなかった。見たい」
 泉介や密だけなら、理由をつけて断ってもよかったが、要は結人のお願いを、断りきれない。
「・・・ゆ、結人。見ても、オレのかっこよさを、忘れないでね・・・」
 断腸の思いで、泣く泣く、要は結人に、女装時の写真を渡した。
 途端、結人のかわいいお目めが、ぱぁっと輝いた。
「わぁ!要さん、きれいだ!お母さんそっくり」
「へ?これが、会長はんなんか?うちの姉ちゃんたちより、きれいやで!」
「あやめさんが、生き返った」
 素直に感動する1年トリオに、怒ることができない要は、少しだけ言い訳をした。
「・・・はは。母さんより、背も高いし、筋肉あって、ごっついけどな・・・」
「だいじょうぶです!要さん、すっごいきれいです」
「・・・うん、その、ありがとな、結人。・・・でも、その笑顔が、なんか、胸に刺さる・・・」
「え?あれ?かなめさん、どうしたんですか?」
「なんでもないよ・・・結人・・・。古傷が痛んだだけさ・・・」
「ええ?!要さん、けがしてるんですか?!」
 4人で騒いでいると、誠志が「ちなみに」と言って、もう一枚、写真を出してきた。
「学園祭の時、他校生が暴れたからな。女装でフラストレーションがたまっていた要がとった行動が、これだ」
 写真には、嬉々として、暴れた学生たちを殴っている要の姿が写っていた。
 もちろん、女装姿で。
 明徳学園には、最強最悪の女がいると、他校にも、九条かな子は伝説を残した。
 さらに、誠志が、数枚の写真を結人に渡した。
 ケンカした後の、すっきり清々しい顔の要(女装版)。
 暑さに胸元を開けて、スカートまくり上げて、水を飲んでいる要(女装版)。
 疲れて、休憩にと、クマのぬいぐるみを抱き枕にして、無防備に寝ている要(女装版)
 何も知らない人間が見たら、仲の良い美形カップルにも見えそうな誠志(男)と要(女装版)のツーショットもあった。
「なんで、オレの黒歴史写真が、次々に出てくんだよ!」
「俺のパソコンに入っているからな」
「削除してやるよ!って、くそっ!!変なセキュリティかけやがって。解除しろ!」
「要女装版の支持者に、高く売れたな。学園の女王の異名で。まあ、最近は下火だが」
「香守家のご子息が、なに、小銭稼いでんだ!意味ねぇだろうが、ぼんぼんが!新手のオレいじめか?てめぇの財布の諭吉、全部生徒会で使ってやるから、よこせ」
 要の怒りを、しれっとした顔で受け流している誠志が、要と女装の要の写真を交互に見て、きょろきょろしている結人の頭をつついた。
「今年は、日向が女装するか?」


去年の学園祭は秘密だらけ 3

「今年は、日向が女装するか?」
「ええ?!香守先輩、なんでですか・・・?」
「お前なら、したことがありそうだな?」
「・・・う・・・」
「どうなんだ?」
「・・・あります・・・。そういうのが好きな人が・・・いたから・・・」
「なら、決まりだな。申請を出しておくからな」
「こぉら、誠志!結人を巻き込むな!会長として、許可ださないからな」
「要の会長印を、勝手に押すだけだ」
「やらせねぇよ!」
 バチバチと火花を散らしだした要と誠志に、結人は慌てて、「すみません!」と叫んだ。
「おれ、しますから、けんかしないでください。おれなら、だいじょうぶです!」
「結人は、悪くないよ」
 要がそういって、結人を優しくなだめようとした時、結人がいいことを思いついたと、にこにこした。
「みんなでするってのは、どうですか?」
 その言葉に、みんな、固まった。
 結人の名案は、いつでも、迷案だ。
 しかも、突発性で破壊力抜群の。
 しかも、結人の言葉を、やたら肯定&実行する悪い癖をもった男が、この生徒会にはいる。
『結人の夢は、いつでもオレが叶える!』がポリシーなのだ。
 九条要という男は。
「いいんじゃねぇ。お前らも女装してみろよ。で、オレの苦しみを知れ!写真撮りまくってやるよ」
 要の言葉には、恨みもこもっているようで、『お前ら』の意味の大部分は、誠志のようだ。
 やられたらやり返す。
 今年は、香守せい子の写真を、何倍にも売りさばいてやる。
 だが、そんなものを受ける気も、女装する気もない誠志が、話しをさらに流した。
「俺に対して、それだけの過剰要求をするなら、日向、お前はそれ相当の代価は、覚悟しているんだな?」
「へ?えっと、代価ですか?」
「そうだな。下着が見えるほど短いナース服と、スリットの上限を超えたチャイナ服と、帯がほとんど崩れている振袖で、選ばせてやろう」
「ええ?!」
 結人が激しく動揺して、両手をばたばたしながら、おたおたしていると、泉介が悪ノリしてきた。
 いや、本気かもしれない。
「オレは、ミニスカでニーソがええと思うで。絶対領域や。結人のほそっちぃ脚なら、いけるで。お、なら、メイドさんもありやな」
「や、やだ!」
 結人の話題になると話に参加してくる密まで、ボソボソ言い始めた。
「結人は、清楚がいい。白いフリルのひざ下ワンピース。頭に、リボンつけてもいいと思う」
「密まで、なにいって」
 みんなのとんでもない要求に、結人が泣きそうになっていたら、要が止めに入ってくれたが、
「お前らなぁ、結人は何着てても、かわいいだろうが。女装で萌えんな。外見で人を判断するもんじゃねぇだろ?」
「かなめさん!やっぱり、要さんは、やさし」
「・・・でも、結人のネコ耳は・・・見たいかも」
「要さんまで、想像しないでぇ!」
 掃除をしていたはずの生徒会室は、妄想広場に変わったようだ。
 今年の学園祭開催を強行するのは、生徒会かもしれない。