2016年01月07日

要がお酒を飲むとどうなる? 4

「ガブガブガブ!モグモグモグ!」
「要、食べる気か?・・・いい加減にしろ」
 誠志の首を腕で拘束したまま、いつまでたっても誠志の首を噛み続ける要に、誠志が眉をひそめながら、低く声を出した。
 そして、力づくで引きはがすことにした。
 要に体重をかけて押し、要の脚が浮いたところに、足払いをかけようとしたが、
「甘いぜ、誠志!よいっしょっとー!」
 要が、倒れそうになった両足を床につけて、踏ん張ったかと思うと、その勢いのまま、誠志を床に押し倒した。
 うつぶせに倒して、その上に乗って、また、誠志の首に腕を回して、捕獲した。
 がっちり、しっかり、逃げられないように、拘束した。
「捕まえたぜ、誠志ちゃん」
 攻めモードの要は、無敵。
 そして、攻めだから、服を脱がすのが、好き。
 脱ぎ上戸じゃなくて、脱がせ上戸。
 酔ってしまうと、ヤりたくなるし。
「うーん、服が、ジャマだな」
 結人の服は、さっき脱がしたので、次は誠志を、脱がせることにした。
 誠志の前に手を伸ばして、ブレザーの制服のネクタイをシュルっとほどいて、シャツのボタンを、プチプチと手際よく外した。
 で、誠志の肩をあらわにしてみたが、誠志の肩は、普段は服で隠れているが、やっぱり、いい感じに隆起した、男らしいもので。
「ムカツク!ガブ!」
「要、やめろ」
「いーやーだ!その男らしい体、オレによこせ!ガブガブ!」
 また、噛んだ。
 要も、誠志みたいな筋肉をつけてもいいが、スピード性の高い技を重視しているので、重い筋肉をつけすぎないようにしている。
 それに、自分の容姿に似合わない。
 この、誠志みたいな、がっしりとした肩が自慢の、逆三角形体系は。
 顔が、うくのだ。
「クソー!噛みまくってやる!」
「・・・お前は、いつまで、攻め状態でいるつもりだ」
 なんだか、要の攻めモードが長い。
 ツンツンしながら、攻めてくる。
 このまま、デレに切り替わるのを大人しく待っていたら、何をされるか分からない。
 結人たちの前で、その醜態をさらすのは、鬼畜攻めの権威にかかわる、重要な問題だ。
 なので、誠志は、腕を伸ばした。
 自分たちを、驚きながら、なのに、のんきにお菓子を食べながら見ている、1年トリオに。
「会長はんが、副会長はんを、襲ってるで。密、お二人は、そういう関係なんか?」
「違う。要は、結人が好きだ。二人は仲がいいだけだ。誠志に、要をいつもとられる。ムカツク」
「密は、要さんが、大好きだもんね。でも、要さんと香守先輩って、ほんとに仲がいいよね」
 そんなほのぼの観察をしている、1年トリオ、泉介、密、結人の中から、一番近くにいた密の足首を、誠志はつかんだ。
「要、俺で遊んでないで、弟で遊べ」
 密を引きづり倒すように、誠志は要に、密を放り投げた。
 身代わりだ。
「密!」
 新たな要の獲物・・・要の大好きな人物の登場に、要の目が、獣を狩るハンターの輝きをきらめかせた。
 そして、飛びかかった。
 誠志を、ぽいっと放り投げて。
「密、きたー!」
「・・・!!」
 無言で、無表情に驚く密を、要はがしっと、抱きしめた。

要がお酒を飲むとどうなる? 5

「ひそっか!」
 密に飛びかかった要が、密を捕獲したかと思うと、密の頭を撫でだした。
 密の硬くてまっすぐな髪が、わしゃわしゃなるほど、思いっきり。
 誠志に対しての、長いツンツンモードの後には、デレデレがきたようだ。
「ひっそかの、黒髪キューティクル!オレの弟キューティクル!」
「要・・・」
「密、どうしたんだ?お兄ちゃんだぜ?もう、兄(にぃ)呼びはしてくれないのか・・・?」
 密が小さいころは、要にぃ、要にぃと呼んで、要の後をついて回っていた。
 にぃにぃ言う密・・・かわいかった。
 その密が、要と呼び出したのは、密なりの自立を目指しだしたということだから、要もそのままにしていたが。
「けどな、お兄ちゃんは、やっぱり、さみしいんだ!」
「・・・・・・・要?」
「密に、にぃ呼びされたら、お兄ちゃん、めっちゃ、がんばれるんだぜ!お兄ちゃん、がんばっちゃうぜなんだぜ!」
「要」
「呼んでくれないんだな。・・・・・・・さみし・・・」
 要が、しょぼんとしたかと思うと、さみしいさみしいと、ブツブツ呟きだした。
かと思うと、密の両肩をガシッとつかんで、密を振り回し始めた。
「呼びやがれ!オレは、オレだけが、密のお兄ちゃんだ!背を抜かれても、お兄ちゃんなんだ!お兄ちゃんなんだ!お兄さんなんだ!兄貴なんだ!だから、だから、だーかーらー」
「?」
「縮め!!」
 要が、無理難題な命令をしてきた。
 伸びた身長が、意志の力で、縮むわけがない。
 そんなこと、分かっている。
 でも、弟の密に、身長を抜かれたのは、要のかなりのコンプレックスだ。
 密は、無表情のまま、どうしようか考え込んだ。
 考えて、考えて、考えて。
 急に、大きな体をコンパクトに丸めて、体育座りをした。
「・・・縮んだ」
 密的解釈と発想で、縮んでみたらしい。
 密なりの、兄の期待に応えようとする、精一杯の努力。
 その結果が、でっかい高校生男子の体育座り。
 その姿に、要がなぜか、感動して、瞳をうるうるさせだした。
「密、お前のその発想力・・・。いつも、かわいいなぁ」
 要が、丸まっている密を、めいいっぱい抱きしめた。
 頭、わしゃわしゃもした。
 そして、
「かわいいから、脱げ!」
 どーんと、密を突き飛ばすと、床に押し倒して、密も脱がしにかかった。
 やっぱり、酔った要は、脱がすのが、大好き。
 いつの間にか、デレから攻めに、切り替わったようだ。
 でも、脱がすだけでは、攻め攻め要は、満足しなかった。
「お兄ちゃんはな、お兄ちゃんなんだ!だーかーらー☆」
 ムフッと要が笑ったかと思うと、密のわきに手を差し込み、
「お兄ちゃんは、弟の弱点を、知り尽くしてるぜ!兄ってのは、そういう生き物だ!兄弟に下克上はないのさ!」
 密のわきを、くすぐりだした。
 意味不明な、兄弟理論とともに。
 更に、全身のあらゆる、密がくすぐったがるポイントを、こしょこしょしだした。
 密が、あまりに的確なくすぐり攻めに、驚愕しながら、無表情にこらえだした。
「・・・・・・・!!」
「ほらほら、そんな無表情でいないで、笑え。笑え!わーらーえー」
「!!」
「笑ったら、きっと、密、かわいいぞぉ」
「・・・・っ!!」
「密、震えるぐらい、こらえちゃって。かわいいなぁ」
 密の弱点を、更にあちこち攻めだした要は、密に馬乗りになったまま、超ご機嫌。

要がお酒を飲むとどうなる? 6

「会長はん、なんや、すごいことになってんで」
 密に馬乗りになって、楽しそうに攻めている要を見ながら、泉介が言わなければいいのに、そんなことを口にした。
 今は、存在感を消し去ることが、重要な状況なのに。
 なので、当然、ハンターモードの要に、目をつけられた。
「せーんすけぇ」
「な、なんや、会長はん?オ、オレは脱がへんで!」
「安心しろ。もう脱がせたぜ!」
「なっ!い、いつの間にや?!」
「オレ、すごいだろ?」
「すごいんやけど、なんでやー?!」
「泉介、すっぽんぽんだな」
 それは、一瞬の出来事。
 閃光のごとき、匠の技。
 って、どんな神技が行われたのか、テクニシャン要が、泉介が驚く間もなく、泉介の衣服を全て脱がせていた。
 酔っ払い要は、当然、泉介のことも、残さず脱がせたい。
 大好きな子たちは、みんな、脱がせたい。
 で、その想いが叶って、脱がせられたから、楽しくって楽しくって、要は上機嫌。
「泉介、かわいいおちんちんしやがって。うりうり」
「会長はん!攻める相手を、まちがえてはるで!!うぎゃー」
 ニコニコしながら、要がおかしなことを始めた。
 泉介の悲鳴が響く。
 要は、ニコニコ、ニコニコ。
 が、
 突然、要の前髪で隠れた瞳が、鋭くなった。
「ウラァ!!」
「?!!」
 驚く泉介の顔の真横をすり抜け、要が、泉介の背後の壁をこぶしで・・・ぶち抜いた。
「危なかったな、泉介。虫がいたぜ」
「む、ムシって・・・!か、壁が・・・!会長はんのほうが、危ないで!!」
「へ?なんでだよ?」
「なんでって、こっちがなんで?や!」
「だって、虫だぜ。怖いだろ?刺されたら痛いぞ。かゆいしな」
「会長はんの、そのパンチが当たったほうが、痛いで!死ぬ!」
「だって・・・虫・・・」
「かわいい顔しても、あかんで!」
「だって・・・オレ・・・泉介が刺されたら、悲しい」
 男前なはずの要が、なんだか、かわいくなった。
 両目をウルウルさせて、しなってなって、しょぼんとなった。
 なんのモードなんだ?と、周りに疑問を抱かせた要は、ぷいっと横を向いた。
 その瞬間、要の視線の先の窓ガラスが、突然、けたたましい音を立てて、割れた。
 誰も、一切触れていないのに、粉々に。
「な、なんや?!」
「ありゃ。誠志、せーいーしー。ヘルプヘルプ」
 要は困った時は、とりあえず、誠志を呼ぶ。
 呼んだら、いつも、なんとかしてくれる。
 なので、なぁなぁと呼び続けたのに、誠志が嫌々そうに、要にほどかれた制服のネクタイを締めながら、無視を決め込んでいる。
「誠志!誠志!誠志!誠志!クソ誠志!オカン誠志!ムシすんな!こっち向けや、オラ!」
 要のガラが、悪くなってきた。
 誠志は知っている、結人たちに見せない要の属性の一つだ。
 誠志は、重い重いため息をつきながら、仕方なく、しぶしぶと返事をかえした。
 酔っ払い要には、なるだけというか、できることならというか、絶対に関わりたくないのに。
「なんだ?」
「あのな、オレね」
「だから、なんだ」
「力の制御、できなくなっちゃった☆」
 要が舌をぺろっとだして、そう、不吉なことを言った瞬間、

 ドカーン!!

 生徒会室が、爆発した。
 性格・属性だけじゃなく、要の破壊系能力まで、開放された。
 なのに、破壊している張本人は、嵐の中心で、
「なぁ、誠志、せーいーし」
「もう、呼ぶな」
「やら!聞いて、聞いて。ってか、聞けや、オラ!」
「なんだ・・・?」
「オレな」
「・・・・・・・・・」
「インスタントラーメン食べたい。もちろん、ミソ味だぜ☆」
 笑いながら、好物を要求しだした。
 誠志の血管が、音を立てて、切れた・・・。