2016年01月21日

みんなの休日 1

読者様から、みんなの休日が読みたいとのリクエストを
頂きましたので、書いてみましたo(⌒0⌒)o


『みんなの休日』

 ある日、学校の中庭で、結人がかわいがっている猫が、数匹の赤ちゃんを生んだ。
 かわいい!
 小さい!
 かわいい!
 小さい!
 さわりたい!なでたい!
 結人は、大きな瞳をきらきらと輝かせて、よろこんだけど、
「赤ちゃんを生んだばかりの猫は、過敏になるから、しばらく離れて見ようね」
と、要にさとされた。
「おれが器だから・・・影響あるのかな・・・」
 そう思ってしまい、しゅんとなっていたら、要が結人の頭をなでながら、生徒会室の備品のビデオカメラを貸してくれた。
 遠くから、見れるようにと。
 機械類に極端にうとい結人だが、見れるのがうれしくて、分からないながらも、密や泉介たちといっしょに、いっしょうけんめいに、撮影した。
 3人で、草むらに頭を突っ込んで、親ねこと子ねこたちを、撮りまくった。
 楽しかった。
 すごくすごく、楽しかった。
 子ねこたちは、よちよち動いててかわいいし、子ねこが離れてしまうと、親ねこがちゃんと迎えにきてくれる。
 猫たちの、仲良し家族な姿を見れるのが、結人はうれしかった。
 カメラを通してみる世界は、見えなかったものまで、いっぱいみれた。
 なんだか、すごく、きらきらして見えた。


 そんな毎日の中で、ふと、ビデオカメラを見て、結人は考えた。
 撮ってみたい『きらきら』があったと。
posted by ちぃ at 16:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 【小説】みんなの休日 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

みんなの休日 2

「明日のお休み、おれ、みんなで、どこかに行きたいです!」
 生徒会室に集まっていたみんなを見ながら、結人はにこにこと、そう言った。
 でも、結人の突然の発言に、みんなが不思議そうに見つめてきたので、結人は不安になって、ごにょごにょと付け足した。
「み、みんなでいっしょに、でかけたことないから・・・。要さんや香守先輩忙しいし、みんなでいるところ、ビデオに撮れたらなって思って・・・」
 うつむきだした結人を見ていた密が、無表情のまま、誠志を指さした。
「なら、誠志が車を出す」
「何を勝手に決めている、密」
「誠志は、結人と行きたくないのか?遠足だぞ」
「どこで、そんな話になった・・・。まったく、相変わらずお前とは話が成立しないな」
 苛立たしげにタバコに火をつける誠志を、結人は大きな瞳でジッと見つめながら、誠志の制服の裾をつかんだ。
「香守先輩は、行けないですか?」
「明日か・・・。まあ、出れなくもないが」
 捨てられた子猫のような瞳で見上げてくる結人から目をそらしながら、タバコを吸っていた誠志が、今度は要を指さした。
「要の目は、泳いでいるな」
「要さん?」
「え?ええっと、結人。その」
 らしくない要の挙動不審な態度を、どうしたのかなと見ていた結人の頭を、要は撫でた後、「ちょっと待ってね」と笑顔で言ったかと思うと、くるりと後ろを向いて、机の上に乱雑においていた紙に、目を通した。
 要の秘書が作った、要の今後のスケジュールだ。
 要に休みの日は、ない。
「えっと・・・明日・・・。いや、あさって・・・しあさって・・・」
 隙間なくびっしりと埋められた予定を見て、頭を抱えた要に、結人は「・・・すみません」と謝った。
「おれ・・・わがままいいました。要さん、忙しいのに・・・」
 うるうるしながら、うつむいてしまった結人の細い肩を包むように、要は両手を置いた。
「結人、明日行こうぜ!」
「え、でも、かなめさん・・・」
「いいんだよ。結人がしたいこと叶えるって、約束しただろ?明日は、寝坊しないようにな?」
「あ、はい!」
 こみあげてくるうれしさを隠し切れず、笑顔でそういう結人に、泉介が後ろから飛びついてきた。
「結人、よかったなぁ。みんな、一緒やで」
「うん!おれ、うれしい」
 泉介と一緒になって、ぴょんぴょん跳ねる結人をほほえましそうに見ている要に、誠志は視線を向けた。
「どうする気だ。無理だろうが」
 分刻みのスケジュール表を見ながら、小ばかにしたように言う誠志に、要はキレ気味に言い切った。
「どうにかして見せる!」
 結人のお願い事を断れる男は、第1生徒会にはいないようだ。


 そんなわけで、結人とみんなの休日が始まった。
posted by ちぃ at 16:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 【小説】みんなの休日 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

みんなの休日 3

「結人、ビデオの充電はしてきたかいなー?」
「うん、泉介!ばっちりだよ」
 結人は、ビデオカメラを楽しそうに、ひょこっと持ち上げた。
 途中で充電がきれたら、たいへんだ。
 だから、今日はまだ、一度も使っていない。
 ねこさん家族の姿は、帰ってから撮るつもりだ。
「なら、ガンガン撮るでー」
「おー」
 仲良し泉介&結人コンビが騒いでいるのは、結人たちの学校がある人工島ではなく、人工島から離れたところにある、緑の多い公園だった。
 誠志の車に乗せてもらい、連れてきてもらった。
 密もいる。
 でも、要はいなかった。
 というか、昨日、生徒会室で約束した後から、ずっといない。
 この公園を待ち合わせ場所に指定したのは、その要だ。
 結人が、わくわくしすぎて眠れず、寝ている誠志の部屋を朝早くに襲撃して、早くきすぎてしまったため、約束の時間にはまだなっていなかったが、
「要さん、まだかなぁ」
 気付けば、公園の入り口を、何度も見てしまう。
「この近くに、要名義の九条家の会社がある。そこから来るつもりなんだろうな」
「香守先輩、そうなんですか?」
 誠志が難しそうな話を始めるのかなと、結人が誠志のほうを向いた時、結人の背後を、一台のバイクが猛スピードで走り抜けた。
「え?」
 バイクは、ブレーキをかけながら、更にスピードを殺そうと、車体を横むかせていたが、スリップしたのか、公園の木に派手に激突して、止まった。
 あのバイクは、確か・・・、
「要さん?!」
「いってて・・・。お、結人。待たせちゃったかな?ごめんね」
 ヘルメットをとりながら、要が何事もないかのように、笑顔で手を振っていた。
 その横を、バイクから取れたタイヤが、転がっていく。
 結人が知っている限り、3回目の廃車状態だ。
 要と知り合って、約2か月。
 要のバイク破壊率は、高い。
「要さん!大丈夫ですか?!」
「ん?ああ、これくらい、へーきへーき」
 結人が、大慌てで、心配して駆け寄ったら、頭をなでられた。
 ついでに、寝癖もなおされた。
 その後ろで、誠志が呆れたように、ため息を吐いていた。
「まったく。要、いい加減にしろ。死ぬ気か?それとも、捕まる気か?」
「別に、これくらい、どーってことないし。それに、捕まったら・・・・・・オレの権力でもみ消すから安心しろ」
 不敵な笑みを浮かべる要は、背負っていたリュックから、普段着とスニーカーを取り出すと、今着ているスーツと革靴とメガネを脱ぎ捨て、着替えだした。
 公園で堂々と。
 要は、仕事着だったようだ。
 結人は何となく、その高そうな布地を、手にしてみた。
 さっきの衝撃で破れたそれも、バイクと一緒に、捨てる気のようだ。
「えっと・・・あ・・・まに?」
 たどたどしくスーツのタグを読んでみたら、誠志につつかれた。
「日向、Rを抜かして読むな。アルマーニだ」
「あるまーに?」
「まあ、お前には、一生買えないものだ」
「ゆーいと。気にいったなら、今度、買ってやるぜ」
 要が突然、そんなことをお天気みたいに軽く言うから、驚くしかなかった。
「ええ?!」
「要、日向にあうサイズがあるわけないだろうが」
「何言ってんだよ、誠志。ARMANIなら、採寸して作ってくれるだろ?沙希がお前に、プレゼントしてなかったか?」
 沙希とは、誠志の妹。
 香守家は、性格に似あわず、意外と兄妹仲がいい。
 そして、要のアルマーニの発音が、自分と違ってなめらかだった。
 結人の頭上で、なんだか、お金持ちの会話が、繰り広げられだした。
 この流れは、いつものだ。
 要がいつの間にか、結人の物を買ってしまう、あの流れだ。
 要に作ってもらった結人の部屋は、あっという間に、要が買い込んだもので、いっぱいいっぱいだった。
 要は結人に使うお金に、ためらいのたの字も持っていない。
 結人は慌てて、両手を振った。
「か、要さん!おれ、もう、いっぱいもらいました!い、いらないです!」
「そう?スーツな結人も、かわいいと思ったんだけどな。わざと、萌え袖とかに仕立てたい」
「いらないですぅ!」
 要のプレゼント暴走を止めるのは、けっこう難しい。
というか、まだ、成功したことない。
 結人が必死に言葉を探していると、いつの間にか、いつも隣にいる密が、結人の腕をつかんできた。
「結人、これから、どこに行くんだ?」
 話がやっと、進みそうだ。
 密は、結人を助けるため・・・というか、気になったことを、素直に口にしただけだが。
 密のマイペースさというか、空気を全く読まず無視する性格には、意外と助けられている。
 結人は、にこにこ笑って、言った。
「どこかだよ」
と。
 結人の計画に、計画性はない。
 でも、困ったことはない。
 だって、
「じゃ、その辺ブラブラしながら、気になったものでも、撮ってまわるか?」
 要がすぐに、打開案を出した。
 結人に計画性がなくても、それを気にさせることなく修正してくれる人たちに、結人は囲まれていた。
「おっし!結人、いくでー」
「おー」
 泉介が結人の手をつかんで、勢いよく歩き出した。
 結人も手をあげて、元気について行った。
posted by ちぃ at 16:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 【小説】みんなの休日 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする